2015 年 40 巻 6 号 p. 1113-1119
症例は83歳男性.腹痛を主訴に当院を受診した.小腸内視鏡で回腸に狭窄を認め,生検結果では悪性所見は認めず,内視鏡的拡張術を施行した.その3カ月後,腹痛の再燃を認め入院となった.同部位の狭窄とイレウス徴候を認めたため,イレウス管にて減圧し,腹腔鏡補助下小腸切除術を施行した.病理診断は単純性潰瘍であった.
単純性小腸潰瘍は非特異性潰瘍に分類され,肉眼的には深い潰瘍で病理組織学的には非特異的炎症像を示す稀な疾患とされる.保存的治療に抵抗性で,手術が必要となる症例も多く,最近まで開腹手術が大半を占めていた.穿孔や出血で発症し,緊急手術を要する場合には腹腔鏡手術の適応が難しい場合もあるが,本症例のように減圧が可能であった単純性小腸潰瘍による腸閉塞は腹腔鏡手術の良い適応であると思われた.