2016 年 41 巻 1 号 p. 127-133
閉鎖孔ヘルニアは,痩せた高齢女性に多くみられる比較的稀な疾患であり,同時性,異時性にかかわらず両側発症例は,全閉鎖孔ヘルニアの2.5~4.0%と特に稀な疾患である.今回われわれは,保存的治癒後の異時性両側閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は90歳代女性,右閉鎖孔ヘルニアによる腸閉塞にたいしイレウス管挿入にて自然還納後退院.1年5カ月後に反対側の閉鎖孔ヘルニアを発症し緊急開腹手術施行した.左閉鎖孔に回腸の嵌頓を認め,用手整復後,左閉鎖孔部位腹膜前腔をメッシュにて補強した.反対右側閉鎖孔も開大しており,同様にメッシュにて補強した.異時性閉鎖孔ヘルニアは,本邦報告は13例と稀な疾患であるが,手術時には両側の確認を行い,可能であれば両側閉鎖孔補強も必要な選択肢の一つになると考えられる.