2016 年 41 巻 5 号 p. 826-832
症例は55歳,男性.心窩部痛を主訴に当院受診.腹部造影CTで膵体尾部に内腔が不均一に造影される50mm大の囊胞性腫瘍を認め,膵尾側には膵炎の所見を認めた.同病変は腹部MRIではT1WIで高信号,T2WIで低信号が主体であった.EUSで主膵管にわずかに高エコーな腫瘍を認めた.ERCPでは膵頭体部主膵管に蟹爪様の陰影欠損を認め,体部に透亮像が続いていた.以上より,IPMN/C,Solid-pseudopapillary tumor(以下SPT),膵腺房細胞腫瘍の疑いで膵体尾部切除術を施行した.摘出標本は充実成分が主体で,内部に壊死を伴っていた.病理組織学的には腫瘍細胞が腺房構造を呈しており,膵腺房細胞癌の診断であった.さらに拡張した主膵管内に腫瘍細胞を認め,膵管内進展を伴っていた.膵管内進展を伴う膵腺房細胞癌は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告する.