日本外科系連合学会誌
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症例報告
剝離用拡張バルーンを用いた腹腔鏡下ヘルニア修復術における膀胱損傷の1例
山根 貴夫石多 猛志石井 雅之大石 英人新井田 達雄亀岡 信悟
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2017 年 41 巻 6 号 p. 1012-1016

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抄録

症例は72歳,男性.左鼠径ヘルニアの診断にて腹腔鏡下ヘルニア修復術(Totally extraperitoneal preperitoneal repair:TEP)を施行した.腹膜外腔拡張バルーン(Preperitoneal dissecting balloon:PDB)を挿入し腹腔鏡視下に腹膜前腔を拡張させたところ,拡張バルーン越しに膀胱壁の裂創とさらに尿道バルーンの露出を視認し膀胱損傷と診断された.膀胱損傷の原因は不明であったが,別症例で同様に腹膜前腔をPDBで拡張させたところPDBと尿道バルーンに挟まれて菲薄化した膀胱壁が確認された.以上から今回この菲薄化した膀胱壁の一部がさらなるPDBによる圧力により損傷した可能性もあることが推測された.TEPにてPDBで拡張剝離するときは,尿道バルーンとに挟まれた菲薄化した膀胱壁が存在している可能性があることを念頭に置く必要があると思われた.

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© 2017 日本外科系連合学会
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