2017 年 41 巻 6 号 p. 913-919
症例1,62歳男性.多発表在食道癌に対し,食道亜全摘術を施行した.病理組織学診断にてpT1b N0 M0 pStage Ⅰ 1),#101Lリンパ節に甲状腺乳頭癌の転移が認められた.食道癌手術より4カ月後に甲状腺亜全摘術を施行した.病理組織学診断にて腺腫様甲状腺腫内に一部甲状腺乳頭癌が認められた.
症例2,59歳男性.表在食道癌ESD後の追加治療として食道亜全摘術を施行した.病理組織学診断にてpT1b N0 M0 pStage Ⅰ,#104Lリンパ節に甲状腺乳頭癌の転移が認められた.食道切除後に甲状腺精査を行ったが明らかな病変は指摘できなかった.患者と相談の上厳重フォローとしている.
本症例は2例とも長期予後が見込まれる.本症例のように食道癌手術時の郭清リンパ節より他臓器癌の転移が発見されるケースがあることを考えると,リンパ節郭清は食道癌のstagingのみならず,他臓器重複癌の診断という観点からも重要であるといえる.