2017 年 41 巻 6 号 p. 941-948
症例は67歳,男性.4年前,局所進行胃癌に対して術前化学療法後に胃全摘術+D2郭清を施行.pStage ⅢCで術後補助療法を行い,以後半年毎のフォローで再発所見を認めず.1カ月前に右乳房の腫瘤を自覚し,当科受診.右D領域に30mm大の腫瘤を認め,CNBで硬癌,ER(-)PgR(-)HER2(-)と診断した.他臓器に病変は認めず.部位・Biologyより典型的な男性乳癌ではないこと,既往に局所進行胃癌があることから胃癌転移の可能性も考えられた.診断治療目的に右乳房部分切除術を施行し,免疫染色を追加し腸管上皮マーカー陽性であり,胃癌の乳房部皮膚転移と診断した.
原発性乳癌と胃癌の転移を区別することに難渋した.今後の治療内容を決定する上で原発部位の確定診断は重要であり,他に転移を認めなければ診断・治療目的の手術を考慮するべきと思われる.