2017 年 42 巻 1 号 p. 40-46
症例は60歳,男性.貧血の精査目的に当院に紹介された.上部消化管内視鏡にて出血性の1型胃腫瘍を認め,EMRを施行した.病理組織学的検査にて胃癌,垂直断端陽性の診断となり,追加的外科治療として胃全摘を施行した.術中,十二指腸が右腹部に下行し,小腸が右腹部に偏在していることが判明した.盲腸,上行結腸は後腹膜に固定されておらず,全結腸は正中から左腹部に存在していた.Ladd靱帯を認め,腸回転異常症と診断した.胃全摘を施行したのち,Ladd靱帯を切離した.次いで上行結腸の右側を通る経路で空腸を挙上し,R-Y再建を行った.また虫垂切除術も施行した.腸回転異常症を伴った胃癌の手術の場合,腸回転異常症に対する処置や胃切除後の再建方法などについて検討を要する.しかし同様の症例は非常に稀であり,標準的な手術方法は確立されていないため,文献的考察を加えて本症例を報告する.