日本外科系連合学会誌
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症例報告
膿瘍形成性虫垂炎で発症し,保存的治療後の精査を経て待機的根治術を行った虫垂癌の1例
市川 英孝大石 英和赤澤 直也岡田 恭穂土屋 誉
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2018 年 43 巻 2 号 p. 196-203

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抄録

症例は48歳女性,発熱と腹痛を主訴に当院を救急受診.右下腹部に限局した圧痛・反跳痛を認め,血液検査では炎症反応の上昇,CT検査では虫垂腫大,壁肥厚と周囲の膿瘍形成と回結腸動脈に沿うリンパ節の腫大を認めた.膿瘍形成性虫垂炎・限局性腹膜炎と診断し,全身状態は安定のため,保存的治療を行い,症状軽快後に精査を行う方針とした.入院後,禁食・抗生剤投与で,症状・炎症反応の改善を認め退院とした.後日の大腸内視鏡では異常所見は認めないものの,CT検査では虫垂壁肥厚と内腔の液体貯留,リンパ節腫大の残存を認めた.虫垂腫瘍を疑い,十分なInformed consent後に回盲部切除術(D3郭清)を施行.リンパ節転移を伴う虫垂粘液癌の最終診断を得た.膿瘍形成性虫垂炎は虫垂癌合併の可能性があり,保存的治療で虫垂炎症状の改善を図り,その後の精査でも虫垂内の液体貯留や壁肥厚,リンパ節腫大などの画像所見が改善しない場合は,待機的手術を積極的に考慮すべきである.

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© 2018 日本外科系連合学会
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