2018 年 43 巻 2 号 p. 222-228
症例は70歳男性.左下腹部の腫瘤を主訴に外来を受診した.腹部単純CT検査にて手拳大の腹壁膿瘍を認めたため,経皮的ドレナージを行った.さらに下部消化管内視鏡検査を行ったところ,SD junctionに狭窄を伴う全周性の腫瘍性病変を認め,生検にて腺癌と診断された.経肛門的イレウス管を留置したのちにS状結腸切除および腹壁合併切除術を施行した.病理学的組織所見は,S,circ,type2,70×50mm,tub1>muc,pT3,pN0,H0,P0,M0,pStage Ⅱで,腹壁内に腫瘍細胞は認めなかった.
原因不明の腹壁膿瘍に遭遇した際には大腸癌を鑑別にあげ,その治療法としてまずドレナージを先行し,炎症を軽快させてから手術治療を行うことが望ましいと考えられた.