2018 年 43 巻 4 号 p. 750-755
症例は78歳の女性.黄疸を自覚し前医を受診.閉塞性黄疸の疑いで当院消化器内科へ紹介となった.腹部造影CTで膵頭部癌および脾腫瘍を指摘.内視鏡的アプローチが困難で経皮的胆道ドレナージが施行され,減黄後に当科紹介となった.脾に1.5cm大の造影効果を伴う単発性腫瘤を認め,膵頭部癌は2.0cm大で局所的には手術適応であった.脾腫瘍の鑑別診断として過誤腫または,血管腫が挙げられたが転移性を含む悪性腫瘍の可能性も否定できなかった.そこで,診断および治療目的で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,および脾臓摘出術を施行した.病理診断は膵頭部癌および脾炎症性偽腫瘍であり,また,脾腫瘍はIgG4染色で陽性を示した.脾炎症性偽腫瘍は摘出して初めて診断されることが多い.また,IgG4関連疾患は悪性腫瘍の合併を高率に認め,転移性腫瘍との鑑別を困難とする.従って,造影効果を伴う脾腫瘍の鑑別診断として脾炎症性偽腫瘍を考慮する必要がある.また,IgG4関連偽腫瘍の場合,経過観察も可能であり,血中IgG4の測定も必要と思われた.