日本外科系連合学会誌
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最新号
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原著
  • 河合 雅也, 塚本 亮一, 宗像 慎也, 杉本 起一, 神山 博彦, 高橋 玄, 小島 豊, 五藤 倫敏, 冨木 裕一, 坂本 一博
    2018 年 43 巻 4 号 p. 553-559
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    【目 的】緩和的な人工肛門造設術では,低侵襲性とQOLの維持が重要となる.当科で経験した症例をretrospectiveに解析し,単孔式腹腔鏡下手術の有用性について検討した.

    【対象と方法】2007年~2014年に初発大腸癌に対して緩和的人工肛門造設を施行した症例を,単孔群(S群:22例)と開腹群(O群:27例)の2群に分け臨床的に検討した.

    【結 果】開腹移行例は1例のみであった.手術時間はS群:92分,O群:142分と有意差を認めた(p<0.01).人工肛門以外の創長はS群:0mm,O群:150mmとS群で短かった(p<0.01).また,CRPは1POD(p<0.01),7POD(p=0.05)ともにS群が低値であった.人工肛門関連合併症はS群では認められず,O群では18.5%であった.

    【結 語】単孔式人工肛門造設術は低侵襲であり,人工肛門関連合併症も少なく,QOL維持に寄与できると考えられた.

臨床経験
  • 目黒 創也, 多賀谷 信美, 内田 まゆか, 平野 康介, 斎藤 一幸, 山形 幸徳, 菅又 嘉剛, 大矢 雅敏
    2018 年 43 巻 4 号 p. 560-565
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    「はじめに」胃粘膜下腫瘍に対し経臍的単孔式腹腔鏡下胃内手術を経験したので報告する.

    「対象および方法」最近2年間に施行した4例(平均年齢66歳,男性3例,女性1例)を対象にした.方法は,臍部創下の胃前壁に小切開を加え,ポート3本を挿入した手袋法で行った.腫瘍の位置を確認し,自動縫合器にて腫瘍切除を行い,切除標本は臍部より摘出した.

    「結果」全例,手術は完遂され,平均手術時間および出血量は101.7分,8mlで,術後胃内の切離線および胃粘膜より出血が認められたが,経口内視鏡下に止血および自然止血していた.平均術後在院期間は8日であった.平均腫瘍径は32mmで,病理組織学的にはGISTが3例,Leiomyomaが1例であり,平均術後観察期間は17.5カ月で,再発や転移は認められない.

    「結語」経臍的単孔式腹腔鏡下胃内手術は胃内操作での出血に注意すれば,安全に施行可能な術式と思われた.

  • 大目 祐介, 岡部 道雄, 河本 和幸
    2018 年 43 巻 4 号 p. 566-571
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    目的:本邦において,2016年4月より腹腔鏡下系統的肝切除術が新たに保険収載された.系統的肝切除の中でも難易度が高いとされる腹腔鏡下肝前区域切除術において,われわれが定型化して行っている腹腔鏡独自の視野を活かした手術手技の安全性・有用性を検証する.

    方法:2016年4月から2017年5月までに完全腹腔鏡下肝前区域切除術を6例に施行した.2014年4月から2017年5月までに施行した開腹肝前区域切除術10例と比較検討した.

    結果:腹腔鏡手術から開腹手術への移行例はなく,両群間で患者背景に有意差は認めなかった.出血量は腹腔鏡群で有意に少なかった(70.5ml vs 753ml,p=0.011).手術時間などその他短期成績に有意差はなく,腹腔鏡群で大きな合併症や周術期死亡は認めなかった.

    結語:われわれが行っている腹腔鏡下肝前区域切除は短期成績においては安全かつ有用と考えられた.

症例報告
  • 西野 雅行, 黒田 暢一, 山﨑 純也, 児島 正道, 大原 重保, 宇多 優吾, 濱田 哲宏, 玉川 慎二郎, 松田 育雄, 廣田 誠一
    2018 年 43 巻 4 号 p. 572-579
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は55歳女性.腹痛・嘔気にて当院受診.腹部CTにて腸閉塞を伴う限局性小腸壁肥厚像を認め入院.経口ダブルバルーン内視鏡にて小腸に狭窄性病変を認めたが,生検結果は悪性所見を認めなかった.治療と診断を兼ねて腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.手術標本での病理診断にて小腸病変は転移性病変が疑われた.14年前の乳癌既往歴より免疫染色を施行しCK7(+),CK20(-),ER(+),E-cadherin(-)を示したことから乳癌の小腸転移が考えられた.乳癌切除標本との検討で小腸病変と同様の所見であり,既往の乳腺浸潤性小葉癌の小腸転移再発と診断した.乳腺浸潤性小葉癌は特殊な転移様式として消化管転移の報告も散見され,診療にあたっては念頭に置く必要があると考えられた.

  • Takahide Toyoda, Tomohiko Iida, Mitsutoshi Shiba
    2018 年 43 巻 4 号 p. 580-584
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    We describe a case of squamous cell carcinoma of the lung with invasion of the esophagus treated by radical en bloc resection as salvage surgery. Chest computed tomography showed a 46-mm tumor and a 25-mm subcarinal lymph node invading the esophagus. After three cycles of chemotherapy with cisplatin plus vinorelbine, the bronchoscopic findings revealed that the hemorrhagic tumor had progressed, and hemoptysis, cough and dysphagia were getting worse and proving very bothersome to the patient. To resolve his symptoms, we performed left pneumonectomy with esophageal resection and reconstruction. The esophagus was reconstructed via a posterior mediastinal route to use the greater omentum for coverage of the stump of the left main bronchus and the anastomosis of the reconstructed esophagus. Although he died of metastatic lung and brain tumors 18 months after the surgery, he was doing well more than one year after the operation. In addition, improvement of the respiratory and digestive symptoms was also achieved with complete resection.

  • 蓮田 憲夫, 沼野 史典, 高野 邦夫, 宮内 善広, 中島 博之
    2018 年 43 巻 4 号 p. 585-590
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    術後遅発穿孔をきたした小児の急性胃軸捻転の1例を経験したので報告する.患児は9歳10カ月,男児,主訴は嘔吐,腹痛,腹部膨満だった.既往は肺動脈閉鎖,心室中隔欠損症で3歳時にRastelli手術が施行されていた.3日前から嘔吐をきたし,次第に腹痛,腹部膨満を認めるようになったため紹介された.初診時,腹部は緊満し,腹部全般で圧痛を認めた.腹部CTで,胃の短軸捻転を指摘,上部消化管造影で,前庭部はbeak像を呈し十二指腸へ造影剤の流出を認めなかった.急性胃軸捻転と診断し緊急開腹した.捻転を用手整復すると胃壁の色調は概ね改善したが,体下部に壁の色調の改善を認めない部分を認め,部分切除した.標本では粘膜障害が標本の切除縁まで及んでいた.術後4日目にドレーンから暗黒色の排液を認め再開腹手術を施行した.前回切除部分の癒合は良好だったが,胃体上部に多発穿孔を認め,穿孔部分を切除し洗浄ドレナージを施行,術後は良好に経過した.

  • 高野 靖大, 岩崎 泰三, 羽生 信義, 武田 光正, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 591-597
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は66歳,女性.脳性麻痺症の既往がある.5年前より急性胃拡張,胃軸捻転症を繰り返し,3年前に腹腔鏡下胃固定術を施行したが,その後2度再発し,いずれも内視鏡的整復を行った.今回,起床時より腹痛,嘔吐を認め,救急外来を受診した.腹部CT,内視鏡検査より急性胃拡張に伴う十二指腸球部捻転と診断し,内視鏡による減圧を施行して症状の改善を認めたが,経口摂取開始後に症状が再燃し準緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,初回手術の固定は解除されており,間膜軸性胃軸捻転症の再発と診断し,胃瘻造設と胃空腸バイパス術を併施した.術後第6病日より経口摂取を開始し,術後第21病日に退院となった.術後1年間が経過したが,再々発は認めていない.胃軸捻転症に対する胃瘻造設術の報告は散見されるが,胃空腸バイパス術を施行した症例は本邦では報告されていない.脳性麻痺症などの難治性神経疾患患者には,消化管運動障害による胃内容排泄遅延がみられ,胃空腸バイパス術は有効な治療法の1つと考えられた.

  • 二渡 信江, 桑野 紘治, 大越 悠史, 坂本 友見子, 旗手 和彦, 石井 健一郎, 金澤 秀紀, 堀田 綾子, 齋藤 生朗, 金田 悟郎
    2018 年 43 巻 4 号 p. 598-603
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性.胃癌に対し,腹腔鏡補助下噴門側胃切除術,D1+リンパ節郭清が施行された.病理組織学的検査は,U,post,Type0-Ⅱc,20×15mm,tub2-tub1>por2,pT4a,int,INFb,ly2,v3,pN0(0/7),pPM0,pDM0,pT4aN0M0,pStage ⅡBであった.術後補助化学療法としてS-1の内服を1年間行った.術後2年目のCT検査で膵上縁に腫瘤を認め,胃癌の再発を疑い手術の方針となった.腫瘤は残胃,膵に浸潤が疑われたため,残胃全摘,膵体尾部切除,脾摘を施行した.病理組織学的検査でデスモイド腫瘍と診断された.デスモイド腫瘍は比較的稀な腫瘍であり,特徴的な画像所見に乏しく,胃癌術後の再発との鑑別が困難である.今回,腹腔鏡下噴門側胃切除後の腹腔内腫瘤に対し周囲臓器合併切除により摘出可能であったデスモイド腫瘍を経験したので報告する.

  • 村田 竜平, 本間 重紀, 吉田 雅, 下國 達志, 大野 陽介, 市川 伸樹, 川村 秀樹, 桑原 健, 武冨 紹信
    2018 年 43 巻 4 号 p. 604-610
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は60歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に当院を受診した.上腹部を中心に強い自発痛,圧痛を認めた.腹部造影CTでは液面形成を伴う小腸拡張像を認め,更に骨盤内小腸は壁肥厚・狭窄を伴い一塊となった状態であった.婦人科手術の既往もあり,絞扼性腸閉塞の可能性を考え緊急開腹術を施行した.開腹所見で①回盲部より150cm口側の回腸で腸重積を認め,更に②250cm口側,③280cm口側の空腸内に腫瘤性病変を触知した.①は重積解除後に小腸部分切除を施行.迅速病理で悪性リンパ腫の疑い.③も腫瘍が大きく小腸部分切除を施行.②は腫瘍が小さく,経過観察とした.永久標本で小腸原発濾胞性リンパ腫と診断し,現在他院血液内科にて化学療法施行中である.小腸原発悪性リンパ腫,特に腸重積を契機として発症した例は非常に稀であるが,腸重積の原因疾患として念頭においておく必要がある.

  • Takashi Hirosawa, Katsuyoshi Kudoh, Takeshi Aoki, Shinobu Ohnuma, Naok ...
    2018 年 43 巻 4 号 p. 611-615
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    A spontaneous, intramural, small-bowel hematoma requiring a surgery is a rare complication of anticoagulant therapy. We present a case of an 82-year-old man who developed abdominal pain in the setting of abnormal coagulation function related to warfarin therapy used as chronic prophylaxis against recurrent pulmonary embolism. Computed tomography (CT) showed wall thickening and luminal narrowing of the jejunum. Dilation of the small bowel proximal to the thickening was also present, indicative of small bowel obstruction. Initially, the patient was treated conservatively, but he later required laparotomy due to worsening of his general condition. A 50cm jejunal segment was resected in order to relieve the intestinal obstruction and to arrest the bleeding. For intramural, small-bowel hematoma, conservative medical management should be the first treatment of choice, but surgical intervention may be indicated if conservative treatment is not successful.

  • 池谷 佑樹, 磯貝 尚子, 河内 順, 下山 ライ, 荻野 秀光, 渡部 和巨
    2018 年 43 巻 4 号 p. 616-621
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    成人小腸軸捻転は稀であるが腸管壊死をきたしうる疾患であり,また絞扼性腸閉塞において乳び腹水を伴うことも稀である.今回,非血性乳び腹水を伴う小腸軸捻転による腸閉塞の1例を経験した.症例は腹部手術既往のない55歳男性.突然発症の強い持続性上腹部痛にて受診した.Computed Tomography(CT)にて腹水およびwhirl signを伴う小腸拡張像を認めた.絞扼性腸閉塞の診断で緊急試験開腹術を行った.乳び腹水を認め,小腸間膜は肥厚し乳白色であった.小腸は腸間膜根部を軸に捻転しており,拡張し浮腫状であったが虚血性変化はなく,捻転解除によって浮腫状変化は改善を認めたため腸管切除せず閉腹した.術後経過良好で第10病日に退院した.絞扼性腸閉塞に乳び腹水を伴う場合には血行障害軽度であり,早期外科的介入により腸管切除を回避できる可能性がある.適切な画像診断技術により,術前に乳び腹水,乳び腸間膜浮腫の診断が期待できる.

  • 福島 尚子, 青木 寛明, 伊藤 隆介, 吉田 和彦, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 622-628
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    胃潰瘍,糖尿病の既往のある55歳男性.突然の左側腹部痛を主訴に救急受診した.CTで腹腔内に遊離ガス,腹水,近位空腸に壁肥厚と腸管の脂肪織混濁を認め,穿孔性腹膜炎の診断で,緊急開腹手術を施行した.Treitz靱帯より約20cmの空腸に穿孔を伴う80mm×40mmの赤色調のType2腫瘤を認め,穿孔部周囲に約1cmの円形の小腫瘤性病変を伴っており小腸部分切除を施行した.病理組織学的検査では異形細胞のびまん性浸潤を認め,免疫組織学的にはCD3+,CD4+,CD8+,CD56+,CD5−,CD20−,granzymeB+/−,TIA-1+であり,Ⅱ型腸管症関連T細胞リンパ腫と診断した.比較的なⅡ型腸管症関連T細胞リンパ腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 吉川 清, 道清 勉
    2018 年 43 巻 4 号 p. 629-632
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    腹腔鏡補助下手術を施行した回腸脂肪腫による成人腸重積症の2例を報告する.症例1,49歳女性.主訴:腹痛.腹部CT検査で腸重積症と診断されたが,自然寛解.その2カ月後,腸重積再発.保存的加療で重積の解除を確認後,小腸造影検査で回腸に隆起性病変を認めた.反復する腸重積に対して,腹腔鏡補助下回腸部分切除術を施行した.症例2,30歳女性.主訴:腹痛.腹部CT検査で腸重積症と診断された.CT検査で重積腸管内に脂肪腫を疑う腫瘤を認め,腹腔鏡補助下回腸切除術を施行した.2症例とも重積の先進部に黄色の隆起性病変を認め,病理組織検査で脂肪腫と診断した.成人腸重積症は器質的疾患が原因となることが多く,回腸脂肪腫も原因疾患の一つとされている.その診断には,CT検査が有用な場合がある.小腸は固定が少ないことから小開腹創からの手術も可能ではあるが,腹腔鏡を用いることで腸管を体外に引き出すことなく病変を同定できることから,腹腔鏡を用いることは有用と考えられた.

  • 坊岡 英祐, 半田 寛, 三原 康紀, 伊藤 康博, 渋谷 慎太郎, 江川 智久
    2018 年 43 巻 4 号 p. 633-638
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代男性.高血圧症,慢性腎臓病で近医にかかりつけ.盲腸癌の術前に施行したCTで脾門部に35mm大の脾動脈瘤を認めた.腎機能障害のため造影剤使用が困難なこと,動脈瘤から複数の太い動脈が流出していることなどから血管内治療は困難と判断.腹腔鏡補助下に回盲部切除および脾臓摘出を同時に施行の方針とした.手術はまずは砕石位にて腹腔鏡補助下回盲部切除術施行.12mmトロカーを2本,5mmトロカーを2本留置し,腹腔内操作を施行.上腹部に4cmの小開腹をおいて腹腔外で機能的端々吻合を行った.次に右半側臥位にて腹腔鏡補助下脾臓摘出術施行.トロカーの位置を移動させて腹腔内操作を再開.脾門部は自動縫合器にて一括切除した.手術時間は6時間27分,出血量は35mlであった.トロカー留置部位を工夫することにより,最小限のトロカーおよび小開腹創で腹腔鏡補助下回盲部切除および脾臓摘出を同時に施行しえた.若干の文献的考察を加え報告する.

  • 大樂 勝司, 船水 尚武, 中林 幸夫, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 639-643
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は92歳男性,発熱と左下腹部痛を主訴に前医を受診され精査目的で当科紹介となった.腹部造影CT検査にて上腸間膜動脈が上腸間膜静脈(SMV)の右側に存在するSMV rotation signを認めた.さらに腫大した虫垂を左下腹部に認めた.腸回転異常症を伴う急性虫垂炎の診断で単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.合併症なく,術後7日目に退院となった.腸回転異常を伴う虫垂炎においても,腹腔鏡手術は安全に施行することができ,適応があると思われた.今回,われわれは腸回転異常を伴う急性虫垂炎に対し,単孔式腹腔鏡下手術にて治療した1例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.

  • Shintaro Maeda, Hirokazu Oshima, Kazuhiro Kojima, Norio Kikuchi
    2018 年 43 巻 4 号 p. 644-648
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    Background: Low-grade appendiceal mucinous neoplasm (LAMN) is rare. Since it can progress to peritoneal pseudomyxoma or mucinous carcinoma, appropriate diagnosis and therapy are needed. Three LAMN cases in various stages that presented within only one year to our hospital are presented.

    Case presentation: Case 1 was a 75-year-old woman with right lower quadrant abdominal pain. She was diagnosed with a mucinous mucocele of the appendix and underwent ileocecal resection. Case 2 was a 67-year-old man diagnosed with chronic appendicitis who underwent appendectomy. Case 3 was a 75-year-old man who was found to have a tumor of the appendix on a periodic examination after gastric cancer surgery and underwent ileocecal resection. These three cases were diagnosed with LAMN, and their surgical margins were negative on pathology. None of them have had recurrence.

    Conclusion: There are no therapeutic guidelines for LAMN. However, since it has malignant potential, correct diagnosis and optimal surgical therapy are needed. Since LAMN can be seen even in small hospitals, these cases are reported along with a review of the relevant literature.

  • 中本 裕紀, 石川 隆壽, 横山 良司, 西川 眞, 武冨 紹信
    2018 年 43 巻 4 号 p. 649-653
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は70代男性.高血圧があり内服コントロール中であった.急性硬膜外血腫で近医脳神経外科入院中に腹痛を発症し当科紹介.虚血性腸炎と診断,臨床所見が軽度であったことより保存的加療が可能と判断した.しかし入院後腹部所見が急速に悪化し,代謝性アシドーシスの進行なども認め腸管壊死を疑い試験開腹術を施行した.審査腹腔鏡にて横行結腸・S状結腸に壊死所見を認め,赤色に混濁した腹水を認めた.開腹手術へ移行後に上行結腸にも壊死所見認め,大腸亜全摘術,小腸単孔式人工肛門造設術を行った.術後経過は良好であり術後29日目に転院となった.病理検査で全結腸型の虚血性腸炎に矛盾しない所見を認めた.

    全結腸型の壊死型虚血性腸炎は予後が悪く死亡率も高く,早期に診断するのは難しいことが多い.初診時に壊死所見を認めなくとも腸管虚血を疑った場合は適宜診察し,腸管壊死を示唆する所見をわずかでも認めた場合は速やかな手術を行うことが肝要である.腸管虚血は粘膜面でより進行しえるため腸管切除範囲の決定の際には漿膜面のみならず粘膜面の色調を確認する必要がある.

  • 伏見 卓郎, 新田 泰樹, 武田 正
    2018 年 43 巻 4 号 p. 654-658
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は65歳女性.肛門からの腸管脱出を主訴に救急外来を受診.約10cmの腸管脱出を認め,先端に3cm大の1型腫瘍を認めた.外来にて用手的に肛門内に還納したのち,腹部CT検査でS状結腸癌の腸重積を認め,内視鏡的に整復した.整復後は腫瘍からの出血は認めなかった.リンパ節転移や遠隔転移はなかった.手術は待機的に腹腔鏡下S状結腸切除,D3郭清を行った.腫瘍は病理組織学的には漿膜下層まで浸潤する高分化型腺癌であった.S状結腸癌が肛門外へ脱出した腸重積症例は比較的稀である.腸重積から肛門外脱出をきたすS状結腸癌は周囲臓器への浸潤がなく,S状結腸が長いことが予想され,腹腔鏡手術の良い適応と考えられた.

  • 岸部 佐希, 宮木 陽, 宮内 竜臣, 山口 健太郎, 成高 義彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 659-664
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    患者は77歳男性.平成28年7月当院脳神経外科にて右内頸動脈狭窄に対し,頸動脈ステント留置術を施行した.術後経過良好であったが,第3病日に下剤を内服後より,腹痛・発熱を認めた.同日腹部単純CT検査を施行し,虫垂穿孔の疑いで,絶食・抗生剤投与などの保存的治療を開始した.第4病日に炎症所見の上昇を認めたため,造影CT検査を施行し,特発性上腸間膜動脈解離,結腸穿孔,限局性腹膜炎の診断で,当科転科となった.抗凝固剤2剤内服中であったため,ヘパリンへの置換を行い,発症10日後に開腹手術を施行した.特発性上腸間膜動脈解離による結腸壊死・穿孔,腹腔内膿瘍と診断し,結腸右半切除術を施行した.術後抗血栓療法を行い,第4病日より食事摂取を再開し,経過良好にて脳神経外科転科後,軽快退院した.特発性上腸間膜動脈解離の報告は稀であり,若干の文献的考察を加えて,報告する.

  • Kengo Hayashi, Masanori Kotake, Hiroki Tawara, Kaichiro Kato, Koichiro ...
    2018 年 43 巻 4 号 p. 665-670
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    Background

    Synchronous neoplasms of the colorectum and kidney rarely occur. This paper is the second report on synchronous sigmoid colon and renal cancers treated laparoscopically. In this report, we describe synchronous cT4b sigmoid colon and left renal cancers treated laparoscopically simultaneously, along with the summary and review of reported cases.Case presentation

    A 45-year-old male presented with high fever and left lower abdominal pain. Computed tomography showed a solid sigmoid colon tumor that was 7cm in diameter and perforated its mesentery. Colon cancer was suspected to infiltrate the adjacent organs including the abdominal wall. In addition, a 5-cm tumor on the left kidney was accidentally discovered, which was suspected to be renal cancer. Colonoscopy showed a circumferential tumor at the sigmoid colon that was 25cm from the anal verge. There was no evidence of distant metastasis. After intravenous antibiotics therapy, we planned laparoscopic left hemicolectomy and nephrectomy. The sigmoid colon cancer adhered to the abdominal wall, small bowel, and appendix; therefore, we performed en bloc resection of the tumor and the adjacent organs. After colectomy, we performed left nephrectomy. Postoperative course was good. The patient was discharged 12 days after the operation.Conclusion

    Laparoscopic synchronous resection is a feasible and curable procedure providing several benefits for the patient. Furthermore, left hemicolectomy and radical left nephrectomy can be a good indication of synchronous resection because both include the same procedure such as mobilization of the splenic flexure. For cT4b colon cancer like in our case, en bloc resection without touching the adhesion can be a curable procedure.

  • 武田 光正, 大熊 誠尚, 根木 快, 小菅 誠, 衛藤 謙, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 671-676
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代の男性,下血の精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行したところ肛門縁から7cmの部位に2型腫瘍を指摘され,生検結果は中分化腺癌(tub2)であった.腹部造影Computed tomography(CT)検査では上行結腸が左側に偏位し,十二指腸水平脚が上腸間膜動脈の腹側を走行しており,non-rotation typeの腸回転異常症と考えられた.直腸癌(Ra)cT3N0M0 cStage Ⅱの診断で,腹腔鏡下低位前方切除術,回腸人工肛門造設術を施行した.手術所見では下腸間膜動脈の血管走行とS状結腸,直腸の位置異常がなかったため通常通りの内側アプローチでの手術が可能であった.腸回転異常症を伴う直腸癌に対する腹腔鏡手術の報告は比較的稀であるため,文献的考察を加え報告する.

  • 中太 淳平, 吉川 貴久, 松井 信平, 矢部 信成
    2018 年 43 巻 4 号 p. 677-683
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は65歳女性,10年前に直腸癌Rs pT2N0M0 pStage Ⅰに対して低位前方切除術(D3郭清,両側側方郭清あり,左結腸動脈温存),受診3カ月前に肝彎曲部の横行結腸癌pT4N0M0 pStage Ⅱに対して結腸右半切除術(D3郭清,中結腸動脈左枝温存)を他院にて施行した手術既往がある.結腸右半切除術後から下痢と食思不振が出現し,前医で入退院を繰り返していたが,転居に伴い当科を紹介受診した.造影CTでは残結腸炎を認め,中結腸動脈左枝や左結腸動脈は同定できなかったが,残結腸から下腸間膜静脈へ環流する静脈はあり,血流は保たれていると考えられた.注腸造影検査では直腸吻合部より近位側の残結腸に,遠位側に優位な狭窄を認めた.残結腸の虚血性大腸炎と診断,数カ月間の保存的加療で改善がなく,低栄養状態を伴うことから,残結腸全摘術と回腸人工肛門造設術を施行した.術後は経過良好で,初診時1.7g/dlだったアルブミン値は術後11日目には2.7g/dlまで上昇し,栄養状態と共に浮腫も改善して,軽快退院となった.さらに,2カ月後には施設基準値の3.9g/dlまで改善を認めた.大腸癌術後に生じた虚血性大腸炎は報告例が少ない.今回われわれは2回の大腸癌手術後に生じた虚血性大腸炎の症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 藤井 仁志, 大塚 幸喜, 木村 聡元, 吉田 徹, 佐々木 章
    2018 年 43 巻 4 号 p. 684-689
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,男性.前立腺癌の精査中に直腸左壁に腫瘤を指摘され当科に紹介となった.腹部magnetic resonance imaging(MRI)検査で直腸RbPに長径77mmの腫瘤を認め,生検で直腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断された.腹部MRI検査では,前立腺,左内閉鎖筋への浸潤が疑われ,さらに腫瘍が大きく手術操作が困難であることが考えられ,メシル酸イマチニブ(imatinib mesylate,IM)(400mg/日)による術前化学療法を開始した.IM投与後11カ月の腹部MRI検査で腫瘍は長径37mm(縮小率52%)まで縮小し,腹腔鏡下直腸切断術を施行した.術後4日に絞扼性腸閉塞を認め,小腸切除術を行ったが,術後23日に退院した.術後IM(400mg/日)を3年間継続し,術後4年5カ月が経過しているが,明らかな再発や転移の所見は認めていない.巨大直腸GISTに対するIM術前化学療法は,腫瘍縮小により根治性,機能温存に関して有効な治療戦略と考える.

  • 津嘉山 博行, 吉武 健一郎, 野口 典男, 山﨑 繁
    2018 年 43 巻 4 号 p. 690-694
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    高齢者の上腸間膜動脈症候群は腹部手術の既往などが誘因となり,保存加療ではそれを解除できないことが多く手術を要することが多い.最近では腹腔鏡下手術が広く行われるようになっている.今回高齢者の上腸間膜動脈症候群に対して腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術を施行し良好に経過した症例を報告する.症例は80歳代男性,大量の嘔吐後に緊急入院となった.腹部造影CT,上部消化管内視鏡,消化管造影検査を施行し上腸間膜動脈症候群と診断した.胃の減圧,絶食,高カロリー輸液による保存加療を行うも改善が見られず,腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術を施行した.術後経過は良好で術後16日目に独歩退院となった.本疾患に対する術式は十二指腸空腸吻合術が多く行われており良好な結果が得られているが,腹腔鏡下手術でより低侵襲かつ有効な術式である.

  • 津田 雄二郎, 山田 晃正, 知念 良直, 板倉 弘明, 高山 碩俊, 上田 正射, 中島 慎介, 太田 勝也, 足立 真一, 遠藤 俊治, ...
    2018 年 43 巻 4 号 p. 695-701
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,男性.突然の腹痛を発症し受診した.来院時身体所見では,右上腹部に腫瘤を触知し,圧痛を認めた.血液検査では,炎症所見の上昇を認めた.腹部造影CTでは,上腹部に造影効果の乏しい多房性構造を認め,小腸間膜囊胞性腫瘍の可能性を疑ったが,臨床症状から小腸絞扼性腸閉塞を否定することができず,緊急審査腹腔鏡を施行した.腹腔内を観察すると,小腸間膜に炎症性肥厚を認めたが,腸管拡張や壊死は認めなかった.小腸間膜内に柔らかい多房性腫瘤を認め,小開腹下に腫瘤も含め小腸部分切除した.切除標本肉眼所見では,小腸間膜内に多房性の囊胞性腫瘤を認め,囊胞内には緑色調の混濁内容液を認めた.病理組織検査所見では,囊胞内面の細胞はD2-40陽性であり,リンパ管腫と診断した.術後経過は良好で,第15病日に退院した.成人の腸間膜リンパ管腫は比較的稀な疾患であり,本邦報告例のまとめとともに報告する.

  • 鈴木 修司, 丸山 常彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 702-707
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は31歳,女性.近医入院の際に肝腫瘤を指摘され,当院紹介となった.造影CTで5~50mm大の遅延相で一部辺縁が濃染する多発肝腫瘤を認めた.EOB-MRIでは,肝細胞造影相で低信号として描出された.以上より多発転移性肝癌と診断し,原発不明であったことから肝生検を施行したが,十分な検体が得られず,確定診断には至らなかった.診断確定のため,肝部分切除を施行した.肉眼標本では白色の多結節性腫瘤で,HE染色では肝細胞はほとんど消失し,線維化,硝子様基質の沈着が認められ,腫瘍細胞は類洞に沿って不規則に浸潤を認めた.CD34,CD31陽性であり,hepatic epitheloid hemangioendothelioma(HEHE)と診断した.その後,無治療で1年4カ月経過しているが,肝腫瘤に変化は認めていない.HEHEは非常に稀な腫瘍で,文献的考察を含め報告する.

  • 中本 裕紀, 石川 隆壽, 横山 良司, 西川 眞, 武冨 紹信
    2018 年 43 巻 4 号 p. 708-711
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は44歳女性.右側腹部痛を主訴に当院内科受診.精査の結果慢性胆囊炎と診断され,当科にて腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.術中に胆囊体部漿膜面に8mmの肝臓と同色で,肝臓と連続性のない結節を認め胆囊とen blocに摘出した.術後病理検査で同結節は肝細胞からなり異所性肝(ectopic liver)と診断された.

    肝外肝組織は発癌や破裂・播種の報告例もあり発見時は本症例のように予防的に切除することが望ましいと思われる.

  • 松本 圭太, 松井 聡, 今井 寿, 田中 善宏, 松橋 延壽, 高橋 孝夫, 山口 和也, 齊郷 智恵美, 宮崎 龍彦, 吉田 和弘
    2018 年 43 巻 4 号 p. 712-718
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の男性.多発肺転移を伴う甲状腺癌(低分化型)に対し両側頸部,縦隔リンパ節郭清を伴う甲状腺全摘術を施行された.局所再発や肺病変の増大なく経過していたが,術後8カ月の造影CT検査,造影MRI検査,PET-CT検査で肝S3/2に直径2cmの腫瘍が出現し,甲状腺癌の肝転移あるいは肝細胞癌が疑われた.肝転移病巣以外はソラフェニブにて制御されていると判断し,診断的治療を目的に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した.摘出腫瘍は病理組織学的,免疫組織化学的検査の結果,甲状腺癌の肝転移と診断された.合併症なく術後12日目に退院となったが,肺転移巣の増大が確認されたため.レンバチニブ導入にて外来通院中であり,11カ月経過した現在,新たな再発病変は認めていない.

  • 赤坂 治枝, 渡邉 伸和, 袴田 健一
    2018 年 43 巻 4 号 p. 719-725
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は45歳,女性.既往歴に約5年間の腹膜透析,腸閉塞,虫垂切除術,子宮広範全摘術があった.以前より胆石症による腹痛を繰り返し,対症療法が施行され軽快していたが,既往歴からハイリスクとして外科的治療の方針とはされなかった.この度,再度腹痛が出現し,対症療法での改善がみられず,加療目的に当科へ紹介となった.慢性胆囊炎急性増悪として抗生剤加療を開始し症状は軽快したが,腹痛を繰り返していることから,外科的切除の方針とした.長期腹膜透析歴,複数の開腹歴,反復する胆囊炎と腹腔内の癒着が想定されたが,腹腔内観察にて腹腔鏡手術の可否を決定することとした.腹腔内の観察で,腹膜に線維化や肥厚など腹膜透析特有の所見を認めた.腹壁正中には広く大網の癒着を認めたが,腹腔鏡手術が不可能な癒着はなく,変則的なポート配置で腹腔鏡下胆囊摘出術を完遂した.腹膜透析歴のある症例でも,腹腔鏡手術は選択可能で,より低侵襲な治療を提供することができると考えられた.

  • 坂本 譲, 砂原 正男, 加藤 紘一, 大野 陽介, 植木 伸也, 木村 純
    2018 年 43 巻 4 号 p. 726-733
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は89歳,男性.糖尿病,慢性心房細動,腹部大動脈瘤ステント留置後の既往があり,心窩部痛と嘔吐を主訴に前医を受診し,胆石性胆囊炎が疑われ当院へ搬送された.腹部造影CTにて,胆石,胆囊腫大および内部に血腫を疑う高吸収域と,胆囊底部に仮性動脈瘤の所見を認め,胆囊動脈瘤破裂による胆囊内出血と診断した.高齢者,多数の合併症,抗凝固薬内服中などの理由から緊急手術はリスクが高いと判断し血管内治療を優先した.緊急動脈塞栓術にて止血は得られ,保存的加療後当科退院となった.塞栓術から5カ月後に待機的胆囊摘出術を施行し,術後経過は良好であった.胆囊動脈瘤は胆道出血の原因疾患としては稀であるが,一旦発症すると緊急的な対応を要する.今回,高リスク症例に生じた胆囊動脈瘤破裂に対して緊急動脈塞栓術にて止血後,安全に待機的胆囊摘出術を施行した1例を経験したので報告する.

  • 谷口 竜太, 松村 勝, 鬼塚 幸治, 坂本 吉隆
    2018 年 43 巻 4 号 p. 734-739
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,女性.心窩部痛と背部痛で当科受診.肝機能障害があり,MRCPで下部胆管内に総胆管結石を認めた.内視鏡的乳頭切開術(EST)施行時,切開部の十二指腸乳頭部から乳頭状腫瘍を認め,生検施行.病理結果で胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)が疑われた.EUSで乳頭部付近の下部胆管内に約1cm大の低エコー腫瘤が描出され,胆道鏡で下部胆管に一部壁不整を認めた.IPNB,下部胆管癌の疑いで亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理検査で,周囲正常胆管粘膜から連続し,異型が混在する円柱上皮の一部に腺癌を粘膜内に認めた.免疫染色でMAC5ACとMAC6が染色された.胆管内発育型胆管癌とIPNBの明確な鑑別はないが,IPNB由来の腺癌の可能性が否定できなかった.下部胆管に発生し,EST後の直視下生検によって術前診断しえたIPNB由来の腺癌を経験したので報告する.

  • 山本 隆嗣, 田中 肖吾, 上西 崇弘, 田中 宏
    2018 年 43 巻 4 号 p. 740-749
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,女性.高CA19-9血症精査目的のERCPで左右肝管合流部直下の肝門部領域胆管に腫瘤が指摘され,総胆管切除が施行された.粘膜限局の高分化型管状腺癌(リンパ節転移・脈管侵襲なし)であった.術後22カ月目に高分化型管状腺癌のVater乳頭部癌が発見され,膵頭十二指腸切除を施行した.癌組織形態は酷似し,いずれもCDX2/CK7/CK19陽性,CK20陰性であった.膵頭十二指腸切除施行後5カ月目にドレーン孔創部瘢痕皮膚に鶉卵大の硬結を認めた.瘻孔部切除標本で高~中分化型管状腺癌を認め,播種転移と診断した.初回手術後29カ月目に腹腔内播種で死亡した.肝外胆管癌とVater乳頭部癌の稀な異時性重複癌と診断した.胆管癌の播種能力は高く,PTBD穿刺部播種はしばしば報告されているが,自験例の様に早期の癌であっても,手術中の少量の腹腔内胆汁散布で播種することがある.このことを念頭におき,治療やサーベイランスは行うべきであると考えられた.

  • 船水 尚武, 中林 幸夫, 大楽 勝司, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 750-755
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は78歳の女性.黄疸を自覚し前医を受診.閉塞性黄疸の疑いで当院消化器内科へ紹介となった.腹部造影CTで膵頭部癌および脾腫瘍を指摘.内視鏡的アプローチが困難で経皮的胆道ドレナージが施行され,減黄後に当科紹介となった.脾に1.5cm大の造影効果を伴う単発性腫瘤を認め,膵頭部癌は2.0cm大で局所的には手術適応であった.脾腫瘍の鑑別診断として過誤腫または,血管腫が挙げられたが転移性を含む悪性腫瘍の可能性も否定できなかった.そこで,診断および治療目的で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,および脾臓摘出術を施行した.病理診断は膵頭部癌および脾炎症性偽腫瘍であり,また,脾腫瘍はIgG4染色で陽性を示した.脾炎症性偽腫瘍は摘出して初めて診断されることが多い.また,IgG4関連疾患は悪性腫瘍の合併を高率に認め,転移性腫瘍との鑑別を困難とする.従って,造影効果を伴う脾腫瘍の鑑別診断として脾炎症性偽腫瘍を考慮する必要がある.また,IgG4関連偽腫瘍の場合,経過観察も可能であり,血中IgG4の測定も必要と思われた.

  • 萩原 令彦, 榎本 俊行, 髙橋 亜紗子, 斎藤 智明, 渡邊 良平, 長尾 さやか, 桐林 孝治, 浅井 浩司, 斉田 芳久
    2018 年 43 巻 4 号 p. 756-760
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    超音波ガイド下に整復後,同日腹腔鏡下手術を行った閉鎖孔ヘルニアの1例を経験した.症例は54歳,女性.右鼠径部痛を主訴に前医で腹部CT検査を施行したところ右閉鎖孔ヘルニアと診断された.手術目的に当院へ紹介受診となり,直ちに超音波プローベを用い嵌頓腸管を整復した後,同日腹腔鏡下手術で修復術を施行した.閉鎖孔ヘルニアは画像診断の進歩により近年術前に診断可能な症例が増加してきている.手術に関しては定型的な手術法は確立しておらず腸管の損傷,腹腔内の汚染の具合で様々な手術方法が用いられているが,発症早期に嵌頓腸管の解除が得られた場合,その同日直後の腹腔鏡下手術はより侵襲の少ない修復術として期待される.

  • 坂下 裕紀, 秋元 俊亮, 岩瀬 亮太, 佐々木 敏行, 小村 伸朗
    2018 年 43 巻 4 号 p. 761-767
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代,女性.S状結腸癌に対し,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.術後第5病日より食事を開始したが,同日夕より腹痛を伴った腹部膨満と繰り返す嘔吐が出現.腹部単純X線検査にて小腸niveau像を認め,術後イレウスと判断した.腹部CT検査を施行したところドレーン刺入部皮下への小腸の嵌入と口側腸管の拡張を認め,ドレーン刺入創への小腸脱出によるイレウスと診断した.ドレーンを抜去し,用手還納を試みたが不可能であったため,同日腹腔鏡下に緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,ドレーン刺入創に小腸の嵌入を認めたため,脱出腸管の還納と腹壁の縫合閉鎖を行った.腸管虚血はなく,腸切除は不要と判断した.ポートサイトヘルニアは,従来比較的稀とされてきた腹腔鏡下手術の合併症であるが,報告例は増加している.腹腔鏡下手術後のイレウスに対して,ポートサイトヘルニアの発症を念頭に置くべきであり,予防には確実な筋膜・腹膜の縫合閉鎖が必要である.

  • 渡邊 勇人, 土田 知史, 大佛 智彦, 谷 和行, 白石 龍二, 青山 徹, 佐藤 勉, 大島 貴, 利野 靖, 益田 宗孝
    2018 年 43 巻 4 号 p. 768-773
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は30歳代,女性.開腹虫垂切除の既往あり.嘔気・嘔吐,心窩部痛を主訴に当院を受診,腹部造影CT検査でMorrison窩に拡張した小腸を認めた.造影検査で右上腹部の小腸に造影剤の途絶を認め,内ヘルニアを疑い手術の方針となった.腹腔鏡下に観察すると,右側横行結腸の頭側に拡張した小腸を認め,Winslow孔へと走行していた.口側小腸の減圧が不十分であったため,開腹移行し,Winslow孔ヘルニアと診断した.嵌頓腸管は用手的に整復が可能で絞扼所見は認めなかった.自験例の要因として,既往の虫垂手術痕に大網が癒着し,右側横行結腸が尾側に牽引され頭側に間隙が形成されたことで,同部位よりWinslow孔を通り小腸が網囊内に嵌頓したと考えられた.

    Winslow孔ヘルニアは比較的珍しい疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 成瀬 貴之, 田畑 信輔, 恩地 英年, 木村 俊久, 飯田 敦
    2018 年 43 巻 4 号 p. 774-779
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/12
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,男性.胃部不快感を主訴に当院受診.精査の結果,Bochdalek孔ヘルニアを伴った胃軸捻転症との術前診断で腹腔鏡手術を施行した.術中所見では左横隔膜腰肋三角部にヘルニア囊を有した横隔膜ヘルニアを認め,上記確定診断に至った.手術は脱出臓器を腹腔内に還納後,ヘルニア門の縫縮は行わずヘルニア門を覆うようにComposix Meshで補強して横隔膜に固定した.また,胃軸捻転に対しては,胃の捻転を解除して腹壁に固定した.術後経過は良好であり,以後再発は認めていない.胃軸捻転症は横隔膜疾患に伴う続発性のものが多く,本症例でもBochdalek孔ヘルニアに伴う続発性の胃軸捻転症であった.胃軸捻転症の手術に際しては,腹腔鏡手術を施行することにより横隔膜の詳細な観察が可能となり,横隔膜疾患の除外もしくは確定診断が可能となるため,本術式は有用であると考えられた.

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