2018 年 43 巻 5 号 p. 812-816
α-fetoprotein(AFP)産生胃癌は肝転移,リンパ節転移を起こし易く,一般的に予後が悪いとされる.また,術後補助化学療法も確立されていない.
今回われわれはAFP産生進行胃癌に対し,術後S-1の長期内服により5年間再発を認めない1例を経験したので報告する.
症例は75歳男性.貧血精査の上部消化管内視鏡で胃癌を指摘され,胃角,前庭部胃癌に対し,2008年5月に幽門側胃切除術+Roux-en-Y再建術を施行.病理はML,Less,type5,55×40mm,pT3,ly1,v2,pN0pStage ⅡA 組織学的に肝細胞癌類似の構造を示しており,免疫組織染色でα-fetoprotein(AFP)強陽性があり,AFP産生胃癌と診断.術後補助化学療法としてS-1の内服加療を開始した.術後3年経過し再発なくS-1を終了とした.
その後外来で経過観察したが術後5年間再発所見を認めていない.