2018 年 43 巻 5 号 p. 817-822
症例は70歳代,女性.下血を主訴に受診し,高度の貧血を認めた.CTは胃前庭部で壁外に突出し,横行結腸間膜への浸潤を示す腫瘍病変を描出した.内視鏡検査では,易出血性で潰瘍を伴った脆弱な腫瘍病変を認め,生検結果は低分化型腺癌であった.進行胃癌と診断し,幽門側胃切除術を施行した.切除標本では,腫瘍は55×45×40mm大で前庭部後壁に主座をおき,表面は脆弱であった.腫瘍内部に一部出血を伴った柔らかい組織を含み,胃粘膜下層より発生した腫瘍病変と診断した.HE染色結果は腫瘍内に拡張した血管が豊富に存在し,好酸性の細胞質と円形の小さな核をもった均一の腫瘍細胞が集簇していた.免疫染色結果は平滑筋αアクチンが陽性であり,胃Glomus腫瘍と診断した.リンパ節転移は認めていないものの,腫瘍細胞は高度異型性を伴っており,また腫瘍が固有筋層に浸潤していることから,悪性を強く疑った.胃Glomus腫瘍は良性と考えられており,悪性を示唆する症例は稀と考えられる.本邦報告例を含めて文献的考察を加えて報告する.