2019 年 44 巻 1 号 p. 62-69
症例は77歳の女性で,労作時の動悸と呼吸困難にて救急受診され,胸部造影CTにて右肺動脈本幹および両側上下葉枝と左下退部深部静脈に血栓を認めた.急性肺血栓塞栓症の診断で,ヘパリンによる抗凝固療法を開始した.入院後の腹部超音波検査にて横行結腸腫瘍の存在を疑い,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸癌を診断した.肺動脈血栓の消失を待って,下大静脈フィルターを留置し腹腔鏡下横行結腸切除を行った.周術期は術後早期回復プログラム(ERAS)導入により早期離床を行い,2日目より抗凝固療法を開始して,術後合併症や血栓症再発なく退院された.急性肺血栓塞栓症は消化器癌術前に合併し致死的な疾患となる場合があり,十分な知識と慎重な対処を要求される.今回,急性肺血栓塞栓症を伴う大腸癌に対して抗凝固療法や下大静脈フィルター,ERASの導入,腹腔鏡手術などの周術期管理により安全に治療しえた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.