症例は85歳女性．２年半前に右乳房腫瘤を指摘され当科受診．右浸潤性乳管癌T2N0M0の診断．右乳房切除術＋センチネルリンパ節生検を施行．病理は浸潤性乳管癌40mm，n0，Stage ⅡA，ER（－）PgR（－）HER2（３＋）．高齢であり副作用を懸念し補助用法は行わず．術後１年，AST，ALT上昇を契機に肝右葉に８cmの腫瘍を認め，消化器科にて肝生検行いHER2（３＋）乳癌肝転移の診断．副作用を考えタキサン系化学療法は行わずTrastuzumab，Pertuzumabのみで治療開始した．半年後には肝転移は画像上消失，その後も約１年半再燃なく治療を継続している．
HER2陽性再発乳癌の一次治療はTrastuzumab，Pertuzumab，docetaxelの併用が標準であるが，本症例のように高齢であり副作用の強い抗癌剤投与を回避するため分子標的薬のみの治療も選択肢となる可能性があると考えた．
