2020 年 45 巻 1 号 p. 25-30
症例は81歳の女性で,来院前日からの嘔吐と腹痛を主訴に当院へ救急搬送された.腹部はやや膨隆し,右側腹部に圧痛と筋性防御を認めた.腹部造影CTでは広範囲な小腸拡張を認め,また盲腸,上行結腸は内側へ偏位しており,その背外側に造影効果の乏しい拡張した小腸を認めた.以上から盲腸周囲ヘルニアによる絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内を観察すると,盲腸外側の小孔に小腸が嵌頓しており,外側型盲腸周囲ヘルニアと診断した.ヘルニア門上縁を切開し,小腸を還納した後に,壊死した小腸の切除,吻合を行った.再発予防目的にヘルニア門を開放した.術後経過は良好で,第21病日に退院となった.盲腸周囲ヘルニアは内ヘルニアの中でも比較的稀な病態であるが,原則手術が必要な疾患であり,正確な診断が必要になる.今回,われわれは,外側型盲腸周囲ヘルニアによる小腸閉塞の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.