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髙田 直樹, 渡部 通章, 高野 裕太, 大熊 誠尚, 矢永 勝彦
2020 年 45 巻 1 号 p.
14-20
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
フリー
症例は74歳女性.胃癌検診で行った上部消化管内視鏡検査で隆起性病変を指摘され当院紹介.同検査では噴門部の頂部に潰瘍を伴った粘膜下腫瘍を認め,病理組織学検査でGISTと診断された.CTでは腫瘍近傍のリンパ節に最大径8mmの腫大を認めた.胃GISTに対し開腹噴門側胃切除術,空腸間置術を行った.術中所見で肝転移,腹膜播種は認めなかった.術前CTで指摘された腫瘍近傍のリンパ節(#1,#7)の術中迅速診断を行ったところ,#1リンパ節に転移を認めたため,リンパ節のpick-up郭清も追加した.腫瘍は大きさ40×40×32mm,免疫組織染色でc-kit陽性,CD34陽性でGISTと診断した.摘出リンパ節16個の内2個に転移を認めた.現在術後3年を経過し無再発で補助化学療法を施行中である.GISTは肝転移や腹膜播種がしばしば認められるが,リンパ節転移は稀であり,文献学的考察を含めて報告する.
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菅 恵梨, 酒井 健司, 野呂 浩史, 山崎 芳郎
2020 年 45 巻 1 号 p.
21-24
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
フリー
症例は65歳,女性.18年前胆石性胆囊炎で腹腔鏡下胆囊摘出術目的に入院時,精査で十二指腸水平脚憩室を指摘された.7年前より心窩部痛や膵炎を頻回に認め,十二指腸水平脚憩室に起因すると考えられたため手術の方針となった.術前の上部消化管造影検査では十二指腸水平脚に径5cm大の憩室を認め,MRCP,DIC-CTで膵管・胆管の圧迫所見はなく,憩室内に残渣様貯留物を認めた.手術は十二指腸水平脚憩室に対して腹腔鏡下十二指腸憩室切除術を行い,切除が広範囲になったため開腹に移行し十二指腸-空腸バイパス術を施行した.術後1年半,症状再燃なく外来経過観察中である.十二指腸憩室は稀に穿孔,出血,憩室炎,Lemmel症候群などの合併症をきたすが,治療方針に関して一定の見解は得られていない.十二指腸水平脚憩室に対して憩室切除術を施行した1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.
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青木 亮太, 橋本 晋一, 山口 敏之, 小松 信男, 林 征洋, 酒井 宏司
2020 年 45 巻 1 号 p.
25-30
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
フリー
症例は81歳の女性で,来院前日からの嘔吐と腹痛を主訴に当院へ救急搬送された.腹部はやや膨隆し,右側腹部に圧痛と筋性防御を認めた.腹部造影CTでは広範囲な小腸拡張を認め,また盲腸,上行結腸は内側へ偏位しており,その背外側に造影効果の乏しい拡張した小腸を認めた.以上から盲腸周囲ヘルニアによる絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内を観察すると,盲腸外側の小孔に小腸が嵌頓しており,外側型盲腸周囲ヘルニアと診断した.ヘルニア門上縁を切開し,小腸を還納した後に,壊死した小腸の切除,吻合を行った.再発予防目的にヘルニア門を開放した.術後経過は良好で,第21病日に退院となった.盲腸周囲ヘルニアは内ヘルニアの中でも比較的稀な病態であるが,原則手術が必要な疾患であり,正確な診断が必要になる.今回,われわれは,外側型盲腸周囲ヘルニアによる小腸閉塞の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
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山根 貴夫, 佐藤 篤司, 加藤 寛之
2020 年 45 巻 1 号 p.
31-36
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
フリー
症例は71歳,女性.数カ月前より時々排便時出血を認めるため近医受診,消化管精査目的で当院紹介となった.下部消化管内視鏡検査で進行直腸癌を指摘,さらに腹部CT検査にて回盲部に腫瘤を認め,直腸切除術と同時に回盲部切除術も施行した.回盲部の腫瘤は盲腸に亜有茎性ポリープとして認め,ヘマトキシリン・エオジン染色(H.E.染色)による通常の病理検索では深達度pTisであったが所属リンパ節転移を認めるとの診断であった.D2-40免疫染色と追加切り出しによる再検討の結果,腫瘍の最深部は粘膜内に留まっているものの粘膜固有層と粘膜下層に脈管侵襲を認め,最終病理組織学的診断はpT1a(Ly)-M,ly1となった.通常病理検査ではTis癌と診断されてもT1癌の可能性もあり,内視鏡的切除でTis癌とされても症例によってはD2-40免疫染色や多数切片作成による詳細な検討が必要であると思われた.
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矢野 佳子, 山口 拓也, 戸口 景介, 外山 和隆, 今井 稔, 平林 邦昭, 木野 茂生
2020 年 45 巻 1 号 p.
37-45
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
フリー
症例は61歳男性.発熱と右下腹部痛を主訴に当院を受診.右下腹部に限局した圧痛,反跳痛を伴う腫瘤を触知し,血液検査では,炎症反応の上昇を認めた.CT検査で回盲部に限局した低吸収性の腫瘤を認め,虫垂の同定は困難であった.膿瘍形成性虫垂炎,限局性腹膜炎と診断し,保存的治療後切除の方針とした.入院後抗菌薬投与で,腹部症状,炎症所見の改善を認め,CTでも腫瘤の縮小を認め退院した.2カ月後のCTで回盲部の腫瘤は残存し,下部消化管内視鏡検査で虫垂開口部に隆起を認め,虫垂腫瘍を疑い手術した.腫瘤は回腸,盲腸に固着し,腹腔鏡下回盲部切除を施行.術後病理診断は虫垂粘液囊腫の穿孔で,粘液囊胞腺腫であった.虫垂粘液囊腫の穿孔は,膿瘍形成性虫垂炎との鑑別は困難であるが,保存的治療後も腫瘤が残存する場合は,積極的に切除すべきである.今回自験例も含め,腹腔鏡手術を施行した虫垂粘液囊腫の本邦報告例149例を検討した.
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知念 良直, 津田 雄二郎, 加藤 亮, 上田 正射, 家出 清継, 中島 慎介, 太田 勝也, 松山 仁, 池永 雅一, 山田 晃正
2020 年 45 巻 1 号 p.
46-50
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
フリー
症例は80歳台女性で,パーキンソン病で入院加療中に突然の心窩部痛が出現した.顔面冷汗著明,腹部は平坦・軟で心窩部に著明な圧痛を認めた.血液検査所見で炎症反応の上昇を認めた.腹部造影CTで,上行結腸周囲に腹腔内遊離ガス像と腸間膜内ガス像を認めた.臨床症状と画像所見より上行結腸穿孔と診断し,緊急手術を行った.開腹時,汚染腹水や腸管の虚血性変化は認めず,盲腸から上行結腸にかけて漿膜下気腫を認めた.気腫を伴う部位に微小穿孔をきたした可能性を否定できず同部位を切除し,一期的に吻合した.病理組織学的所見では上行結腸の固有筋層内に気腫状の腔を認め,腸管囊胞気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis,以下,PCI)と診断した.PCIは腸管気腫像に加えて腹腔内遊離ガス像を認める場合があり,保存的加療が可能な疾患である.今回,術中にPCIと診断できずに術式判断に苦渋したため,文献的考察を加え報告する.
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藤井 学人, 田代 浄, 竹中 芳治, 正木 幸善
2020 年 45 巻 1 号 p.
51-55
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
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症例は85歳男性.腹部大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術(endovascular aortic repair:EVAR)を施行.フォローのCT検査で上行結腸癌腸重積症および腹部大動脈瘤TypeⅡ Endoleakを指摘された.上行結腸の閉塞および癌進行のリスクを考慮し大腸癌手術を先行とした.Endoleakの治療に開腹手術も想定されたため上行結腸癌の手術は低侵襲かつ癒着回避目的に腹腔鏡手術を選択した.従来のポート配置では腹腔内中央を占拠する動脈瘤によりworking spaceの確保と視野展開が制限される可能性や,左側ポートからの鉗子接触に伴う瘤破裂のリスクが予測されたために単孔式腹腔鏡手術を選択した.結果,瘤を圧迫することなく安全に手術を遂行できた.腹部大動脈瘤を合併する腹腔鏡下大腸癌手術の際には単孔式腹腔鏡手術はじめポート配置の工夫が重要となる.
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中村 崇宣, 貝羽 義浩
2020 年 45 巻 1 号 p.
56-61
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
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症例は86歳女性.下腹部膨満感を主訴に近医を受診した.同医で施行した腹部単純X線検査にてS状結腸軸捻転症と診断され,内視鏡的整復術の方針となった.前処置として浣腸を施行したところ症状が改善し,下部消化管内視鏡検査でも腸管の捻転は解除されていたため,帰宅となった.翌日症状が再燃し,その後も症状が続くため,翌々日に他院を受診し,同院にて施行した腹部造影CT検査にて右側結腸捻転症の診断となり当院へ搬送となった.緊急手術を行い開腹すると,右側結腸は後腹膜に固定されておらず,腸間膜を軸に時計回りに270度捻転していた.捻転を解除したが,上行結腸の漿膜に縦走する損傷部位を複数認めたため,結腸右半切除術を施行した.術後経過は良好で第21病日に退院となった.右側結腸捻転症は整復した後も再発率が高く,注意が必要である.
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谷口 竜太, 皆川 紀剛, 鬼塚 幸治, 坂本 吉隆
2020 年 45 巻 1 号 p.
62-67
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
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症例は83歳,男性.下血で下部消化管内視鏡検査を施行.S状結腸腫瘍と多数の憩室を認め,憩室内に腫瘍進展が疑われた.生検結果でGroup 3,絨毛腺腫だった.造影CTでS状結腸の腫瘍性病変以外,特記所見は認めなかった.注腸造影でS状結腸腫瘍の周囲に多数の憩室を認めたが,壁の不整は認めなかった.S状結腸腺腫の憩室内浸潤のため,内視鏡的粘膜下層剝離術では穿孔の危険性も高く,また癌の成分を一部含むことも予想され,腹腔鏡下S状結腸切除術の方針とした.肉眼所見では腫瘍の憩室内浸潤所見は同定できなかった.病理検査で,病変は通常の大腸壁粘膜に癌を認めたが,さらに仮性憩室内に連続する癌が漿膜へ浸潤しており,進行癌の診断だった.仮性憩室内癌は筋層が欠如しているため,進行癌や穿孔で発見されることが多く,憩室近傍の高度異型や粘膜癌を疑う場合は,内視鏡的切除よりも手術が推奨される.
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前田 裕之, 吉松 和彦, 河野 鉄平, 伊藤 嘉智, 山田 奏史, 岡山 幸代, 横溝 肇, 島川 武, 勝部 隆男, 塩澤 俊一
2020 年 45 巻 1 号 p.
68-73
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
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症例は76歳,女性.腹痛,下痢,腹部膨満感を主訴に受診し直腸S状部の局所進行癌と診断した.腫瘍が巨大で骨盤腔を占拠していたため,腫瘍縮小を期待し化学療法後に2期的に根治切除を行う方針とした.横行結腸人工肛門造設術後mFOLFOX6+Bevacizumab(以下Bev)療法を6コース施行した(Bev療法は2~4コース目のみ追加).腹部CT検査で腫瘍縮小を認めたため,最終投与日より1カ月後に高位前方切除術+D3郭清,人工肛門閉鎖術を施行した.病理組織学的所見では原発巣は線維化や石灰化が広範囲に認められたが,viableな癌細胞は存在しなかった.またリンパ節転移も認めなかった.以上から病理学的完全奏効(pCR)と診断した.
局所進行大腸癌に対する術前化学療法は確立されていないが,mFOLFOX6+Bev療法は有効な術前化学療法の1つになりえると考えられる.
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山根 貴夫, 佐藤 篤司, 伊藤 慶則
2020 年 45 巻 1 号 p.
74-80
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
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症例は69歳,女性.数日前より左側腹部痛を認め当院受診,精査目的の腹部超音波検査にて右下腹部に腫瘍病変を指摘,腹部造影CT検査にて同部位に多血性の腫瘍を認め,加療目的に当科紹介となった.腹腔鏡下に腫瘍摘出術を施行し術中の所見から大網由来と考えられた.病理結果はCD34(+),STAT6(+),S100(-),SMA(-),Desmin(-),MDM2(-),CDK4(-),c-kit(-),EMA(+/-)を示し,孤立性線維性腫瘍(Solitary fibrous tumor:以下SFT)の診断であった.大網から発生した稀なSFTを経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
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平井 公也, 松尾 憲一
2020 年 45 巻 1 号 p.
81-85
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
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症例は55歳,男性.駐車場の解体作業中に重機と共に転落し,5cm長で母指頭大の鉄筋が左大腿近位部外側から腹腔側に刺入するように受傷し,開放創を認めたため救急搬送された.受診時,左大腿近位部外側に開放創と左下腹部に限局した自発痛を認めたが,腹部に挫創や皮下出血,膨隆は認めなかった.CT検査で左腸骨に転位を伴う骨折と,破綻した腹壁から皮下への小腸脱出と腹直筋背側に微小な遊離ガス像を一箇所認めた.左腸骨開放骨折,外傷性腹壁ヘルニアおよび腸管損傷を疑い緊急手術を施行した.小腸間膜・腸管損傷と左下腹部に腹膜損傷を認め左大腿開放創との交通を確認した.損傷した小腸間膜を閉鎖し損傷腸管を修復したのちに,破綻した腹壁を結紮縫合で閉鎖した.術後リハビリテーションを施行し,第26病日に退院となった.今回われわれは,外傷性腹壁ヘルニアの病態を呈した杙創瘻孔内への腸管脱出の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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西田 孝宏, 高原 善博, 大野 達矢, 宇野 秀彦
2020 年 45 巻 1 号 p.
86-90
発行日: 2020年
公開日: 2021/02/28
ジャーナル
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症例は76歳女性.心窩部痛,嘔吐を認め前医受診.レントゲンで腸閉塞を疑われ,当院受診となる.CTで右胸腔への胃と横行結腸の脱出を認め,Morgagni孔ヘルニアと診断された.腹腔鏡下に脱出臓器を還納し,ヘルニア門をSymbotex™ composite meshを用いて閉鎖した.術後に残存ヘルニア囊に水腫形成を認め,炎症所見と呼吸器症状を認めたため,経皮経肝横隔膜経由でドレーン留置を行った.その後,速やかに炎症所見と呼吸器症状の改善を認めた.本疾患に対する腹腔鏡下手術は簡便かつ低侵襲であり,有用な方法であるが,水腫や血腫形成が循環呼吸器系への影響を及ぼす可能性があり,症例によってはドレナージなどの対応が必要であると考えられた.
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