2021 年 46 巻 4 号 p. 455-461
症例は78歳,男性.糖尿病性腎不全による血液透析施行中で,水疱性類天疱瘡に対しステロイドを内服し,閉塞性動脈硬化症で抗血小板薬も内服していた.胸部苦悶感を主訴に前医を受診し,胸部中部右側の特発性食道破裂の診断で当院に救急搬送された.発症後約9時間で緊急手術を施行した.胸腔鏡補助下に胸腔洗浄ドレナージ,穿孔部縫合閉鎖の上,肋間筋弁で被覆し手術を終了した.術翌日に人工呼吸器を離脱し,術後4日目にICUを退室したが,術後10日目に縫合不全・膿胸を生じ,再手術を施行した.胸腔鏡補助下胸腔洗浄ドレナージに加え,経腹的に縦隔ドレーンの挿入を行った.胸腔内膿瘍・穿孔部の瘻孔形成・閉鎖に長期間を要したが,瘻孔の腹腔内への誘導により治癒し,再手術後92日目に全ドレーンを抜去,120日目に自宅退院した.基礎疾患によりリスクが高い症例であり縫合不全を生じたが,治療にあたっては経腹経横隔経路でのドレナージが有効であった.