日本外科系連合学会誌
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46 巻, 4 号
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原著
  • 薄葉 輝之, 小川 匡市, 熊谷 祐, 飯田 智憲, 青木 寛明, 池上 徹
    2021 年 46 巻 4 号 p. 423-427
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    当院では,鏡視下手術を施行する際に,手術認定制度と新規術式導入時の院内ルールを制定している.今回,新規導入した外科領域8術式に関して,安全に導入しえたかを検証した.食道癌手術と肝切除以外の6術式に関しては安全に導入することができたが,この2術式に関しては再手術や開腹移行症例を認めたことから,今後,難易度の高い術式の導入の際には症例の選択に慎重を要すると考えられた.

  • Yusuke Komekami, Fumio Konishi, Takayoshi Yoshida, Toru Maeda, Chunyon ...
    2021 年 46 巻 4 号 p. 428-433
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    Objection: The elderly population, which carries an increased risk of postoperative complications, is increasing in size. “Frailty” is a new concept for assessing the surgical risk in elderly patients. We analyzed the usefulness of assessing frailty for predicting postoperative complications in patients ≥60 years of age undergoing colorectal cancer surgery.

    Methods: We conducted this prospective evaluation in 65 colorectal cancer patients ≥60 years of age who were underwent surgery for colorectal cancer. As relatively simple tools to predict the risk of postoperative complications, we evaluated the performance status, Barthel index, American Society of Anesthesiologists physical status, prognostic nutritional index and frailty. We also recorded the incidence of Grade ≥Ⅱ postoperative complications according to the Clavien-Dindo Classification.

    Results: A bivariate analysis showed that frailty was significantly associated with the risk of postoperative complications (p = 0.049). A multivariate analysis also identified frailty as being significantly associated with the risk of postoperative complications (p < 0.030).

    Conclusion: Assessment of frailty may be a useful tool for predicting the risk of postoperative complications in patients aged ≥60 years old.

臨床経験
  • 渡海 大隆, 野田 和雅
    2021 年 46 巻 4 号 p. 434-443
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:腹腔鏡下虫垂切除術(LA)における虫垂根部処理の手技としては自動縫合器,ループ式結紮器などが一般的である.一方,単孔式LAでは,臍部から直視下に断端処理を行うことも可能である.今回,直視下断端処理の成功率と有用性,直視下処理が不可能となる要因を検討した.

    対象と方法:2017年1月~2019年12月に施行された急性虫垂炎に対するLA136例を「直視下群」と「非直視下群」に分け後方視的に検討し,術後のアウトカム,各切離法における医療コストを比較した.また,非直視下となるリスクについて,患者背景別に検討した.

    結果:直視下処理の成功率は80.9%であった.直視下群は術後アウトカムが良好であり,医療コストも安価であった.非直視下となるリスクは単変量解析で年齢,BMI,臍から虫垂根部への3次元的距離,皮下脂肪厚,膿瘍の有無が有意な因子であり,多変量解析では年齢とBMIであった.カットオフ値は年齢が24.5歳,BMIが21.5kg/m2であった.

    結語:臍部での直視下処理は高い確率で施行でき,安価であった.多くの症例で完遂可能であるが,年齢とBMIの高い症例では困難な場合もあり注意が必要である.

症例報告
  • 中神 光, 二村 学, 林 祐一, 野口 慶, 森 龍太郎, 浅野 好美, 徳丸 剛久, 吉田 和弘
    2021 年 46 巻 4 号 p. 444-449
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    筋強直性ジストロフィー1型(Myotonic dystrophy type 1,DM1)は,ミオトニア現象を伴う常染色体優性遺伝性筋疾患である.腫瘍の合併率が高い点で重要な疾患であるが,心合併症や呼吸不全の進行により腫瘍に対する外科手術困難の原因にもなる.そのため,DM1と腫瘍の両者を評価し,治療方針を決定することが重要である.われわれは,DM1に巨大葉状腫瘍を合併した症例を経験したので報告する.症例は39歳女性,特発性慢性呼吸不全の診断のもと,近医で経過観察されていた.左乳房腫瘤が約20cmまで増大し,治療目的に当科に紹介となった.遺伝子検査からDM1と診断し,左乳房腫瘤は,葉状腫瘍と診断した.外科手術を検討したが,DM1によるⅡ型呼吸不全の増悪により,手術療法は断念し,看取りの方針とした.DM1は,腫瘍合併リスクが高いことから,腫瘍早期発見のため適切なスクリーニングの施行,治療法の選択や治療時期の検討が必要である.

  • 村形 綾乃, 長内 孝之, 谷田部 悠介, 上平 大輔, 田波 秀朗
    2021 年 46 巻 4 号 p. 450-454
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    乳癌胸筋間リンパ節転移に対して術中インドシアニングリーン(以下ICG)蛍光造影法を用いて病変を確認した1例を経験したので報告する.

    症例は63歳,女性.57歳時に左乳癌に対してBt+Axを受けた.62歳時に超音波検査で左胸筋間に12×23mm大のリンパ節を認め,穿刺吸引細胞診でAdenocarcinoma,Metastatic carcinoma suspectedと診断し,腋窩リンパ節郭清術を行った.大胸筋間溝を切開し小胸筋前面に至り,ICG蛍光造影法で描出される胸筋間リンパ節を確認し,小胸筋ごとリンパ節を切除した.

    本症例のように既に郭清が行われ,瘢痕化した組織のなかでは病変の同定に苦慮することもあるが,ICG蛍光造影法を用いることで陽性リンパ節を確認し切除することができた.また,ICG蛍光造影法は遺残リンパ節をなくすためにも有用であったと思われる.

  • 橋田 真輔, 妹尾 知哉, 藤原 亮太, 松本 眞琴, 梅田 将志, 東原 朋諒, 高橋 優太, 田中 則光, 三竿 貴彦, 大橋 龍一郎
    2021 年 46 巻 4 号 p. 455-461
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,男性.糖尿病性腎不全による血液透析施行中で,水疱性類天疱瘡に対しステロイドを内服し,閉塞性動脈硬化症で抗血小板薬も内服していた.胸部苦悶感を主訴に前医を受診し,胸部中部右側の特発性食道破裂の診断で当院に救急搬送された.発症後約9時間で緊急手術を施行した.胸腔鏡補助下に胸腔洗浄ドレナージ,穿孔部縫合閉鎖の上,肋間筋弁で被覆し手術を終了した.術翌日に人工呼吸器を離脱し,術後4日目にICUを退室したが,術後10日目に縫合不全・膿胸を生じ,再手術を施行した.胸腔鏡補助下胸腔洗浄ドレナージに加え,経腹的に縦隔ドレーンの挿入を行った.胸腔内膿瘍・穿孔部の瘻孔形成・閉鎖に長期間を要したが,瘻孔の腹腔内への誘導により治癒し,再手術後92日目に全ドレーンを抜去,120日目に自宅退院した.基礎疾患によりリスクが高い症例であり縫合不全を生じたが,治療にあたっては経腹経横隔経路でのドレナージが有効であった.

  • 立川 伸雄, 嶋根 学, 中島 理恵, 横塚 慧, 清水 芳政, 堀 眞佐男
    2021 年 46 巻 4 号 p. 462-469
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代女性.1年前より食道裂孔ヘルニアおよび胃粘膜下腫瘍を認めていたが,症状がなく手術希望もなかったため,近医で経過観察としていた.今回貧血を主訴に当院を紹介受診した.上部消化管内視鏡検査と上部消化管造影検査では,混合型食道裂孔ヘルニアおよび体部前壁にdelleを伴った4cm大で胃内突出型の粘膜下腫瘍を認めた.胸腹部CTでは,胃穹窿部と前庭部が縦隔内に嵌入しており,さらに胃の内腔に突出するlow density massを認めた.貧血の原因は腫瘍からの出血であると判断し,腹腔鏡下胃局所切除術およびメッシュを用いた食道裂孔ヘルニア根治術を施行した.病理組織学的検査にて腫瘍径は40mmで,紡錘形腫瘍細胞が増生しており,免疫組織染色にてKITおよびCD34陽性,核分裂像400倍10視野合計1個未満であり,超低リスクGISTと診断した.今回,腹腔鏡下で同時に根治術を実施したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 江藤 誠一郎, 小村 伸朗, 瀧島 輝幸, 竹内 秀之, 松本 倫, 平林 剛, 河原 秀次郎
    2021 年 46 巻 4 号 p. 470-475
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は18歳,女性.腹痛,嘔気,嘔吐を主訴に前医を受診し,小腸イレウスの疑いで当院へ転院搬送となった.腹部造影CT検査で,遠位回腸に腸管重積所見を認め,小腸ポリープなどの器質的疾患に伴う小腸腸重積の診断のもと,同日緊急手術の方針となった.術中所見にて回腸末端から160cm口側腸管に約30cmにわたる腸管重積を認めた.腹腔鏡補助下での重積解除後に小腸部分切除を施行した.摘出検体の病理組織像もあわせて最終的にPeutz-Jeghers症候群と診断した.今回,われわれはPeutz-Jeghers型ポリープによる腸重積に対し腹腔鏡補助下手術を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 村上 幹樹, 大橋 浩一郎, 中尾 英一郎, 宇多 優吾, 大原 重保, 濱田 哲宏, 児島 正道, 西野 雅行, 山崎 純也, 岡田 敏弘
    2021 年 46 巻 4 号 p. 476-482
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,女性.腹部膨満感と腹痛,嘔吐,下痢を主訴に受診した.腹部は著明に膨満しており,腹部全体に軽度の圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は乏しかった.CTで広範な小腸の拡張と小腸軸捻転および小腸の壁内気腫像を認めたため,緊急開腹手術を施行した.小腸腸管壁内に広範に気腫像を認めたが,壊死腸管は認めなかった.以上より小腸軸捻転と腸管囊胞状気腫症と診断し捻転整復のみを行い手術を終了した.術後の問診より以前から手指の皮膚硬化症状があり,精査の結果抗セントロメア抗体陽性が判明したため,全身性強皮症の診断となり内服治療開始となった.術後12カ月経過しているが強皮症ならびに腹部症状に関して悪化徴候は認めていない.今回小腸軸捻転を伴う腸管囊胞状気腫症に対して手術後に全身性強皮症の診断を得た症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 江藤 誠一郎, 小村 伸朗, 島田 哲也, 瀧島 輝幸, 竹内 秀之, 松本 倫, 平林 剛, 河原 秀次郎
    2021 年 46 巻 4 号 p. 483-488
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    血便に伴う出血性ショックを契機に発見されて腹腔鏡下手術にて切除し,診断された直腸神経内分泌癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は71歳,男性.血便に伴う出血性ショックの病態で当院へ救急搬送となった.直腸RSに20mm大の2型腫瘤を認め,活動性出血を伴う露出血管を認めた.内視鏡下に止血後,待機的に手術施行した.腹腔鏡下高位前方切除術,2群リンパ節郭清を施行した.術後経過良好で術後第14病日に退院となった.病理学的診断として直腸神経内分泌癌pT2N2aM0 fStage ⅢBと診断されたが,患者背景を考慮した上で術後補助療法は施行しない方針となった.術後9カ月の時点で多発肺転移,左内腸骨リンパ節転移を認めたため,在宅緩和医療の方針となった.術後11カ月現在も在宅緩和医療継続中である.

  • 貝崎 亮二, 井上 透, 高塚 聡, 塚本 忠司
    2021 年 46 巻 4 号 p. 489-494
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は30歳代,女性.下部直腸癌・右側方リンパ節転移(No.283)に対し,術前化学放射線療法後(S-1:80mg/m2,RT:40Gy/20fr)に腹腔鏡下低位前方切除術,右側方リンパ節郭清,回腸人工肛門造設術を施行した.術後1カ月のCT検査で右骨盤内に約6×4cm大のリンパ囊胞を指摘されたが,術後7カ月のCT検査ではわずかに増大しているのみであった.術後経過観察中に右大腿部のしびれが出現したため,術後8カ月に回腸人工肛門閉鎖術および腹腔鏡下リンパ囊胞開窓術を施行した.開窓術後より大腿のしびれは消失した.術後2年が経過した現在,リンパ囊胞の再発や症状の再燃はみられていない.

    リンパ囊胞は,側方リンパ節郭清の普及とともに最近では外科領域においても報告が散見される.有症候性リンパ囊胞は保存的治療や外科的治療が必要である.腹腔鏡下開窓術は低侵襲であり,有効な治療法であると考える.

  • 上田 和光, 下田 貢
    2021 年 46 巻 4 号 p. 495-499
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,女性.主訴は右季肋部痛.開腹歴はない.血液生化学検査は概ね正常だが,腹部画像検査で胆囊体部から底部の浮腫が著明であり,底部が左方に偏位しており,頸部での捻転が疑われ腹腔鏡下胆囊摘除術を施行した.肝表面から右横隔膜につながる数本の索状物が存在し,その中のS4/5境界の肝表面の索状物を中心に胆囊が時計回りに捻転し絞扼されていた.索状物を離断すると絞扼は解除され,胆囊は胆囊管のみが肝下面に付着するGross分類Ⅱ型の遊走胆囊であった.病理所見は胆囊粘膜内の浮腫,出血がみられたが虚血性変化はなかった.血清クラミジア抗体(Ig A,Ig G)が高力価であり,索状物はFitz-Hugh-Curtis症候群のviolin string-like adhesionと考えられた.索状物による胆囊捻転と絞扼は稀で自然解除の報告はなく,壊死に陥る前に積極的に胆囊摘除術を行うべきと考える.

  • 福田 卓真, 澤田 成朗, 藤井 努
    2021 年 46 巻 4 号 p. 500-507
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の大酒家の男性で,持続する心窩部痛を主訴に近医を受診した.血液検査および腹部超音波検査で慢性膵炎の急性増悪と診断され当院に紹介となった.胸腹部造影CTで膵体部から縦隔内に進展する膵仮性囊胞を認め,アルコール性慢性膵炎の急性増悪に伴う後腹膜・後縦隔内膵仮性囊胞と診断した.まずは保存的治療を開始し,状態が一旦改善傾向となったが,経口摂取再開後に再増悪し,内瘻化が必要と判断した.内視鏡的アプローチが困難で,また他院への搬送も難しい状態であったため,開腹下経胃的膵囊胞穿刺を行い,術後18日目に内瘻化チューブに置換し,その後治療しえた.膵仮性囊胞は慢性膵炎の合併症として知られているが,縦隔内まで進展することは比較的稀である.また,本症例のように開腹下経胃的囊胞穿刺による計画的内瘻化で治癒せしめた報告はなく,内視鏡的治療が困難な状況下での症例に対して今回の手技は有効な治療法の一つと考え報告する.

  • 伊藤 よう子, 矢作 雅史, 亀山 哲章, 秋山 芳伸, 中西 邦昭
    2021 年 46 巻 4 号 p. 508-513
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は54歳男性.2日前から増悪する右下腹部痛を主訴に前医に受診し,腹部単純CT検査で急性虫垂炎が疑われ,加療目的に当院に紹介受診した.身体所見では,右下腹部に圧痛を認め,血液検査所見で中等度の炎症を認めた.当院で改めて読影したところ,明らかな虫垂を同定できず,虫垂炎としては非典型的な所見であり,保存的治療の方針で緊急入院した.入院翌日に腹部造影CT検査を施行したところ,回盲部前面に楕円形に被覆された脂肪織濃度の上昇を認め,頭側に胃大網動脈に連続する渦巻き状の血管構造を認め,大網捻転症と診断し,緊急手術の方針とした.手術は単孔式腹腔鏡下で行い,捻転した大網が回盲部と一塊となり腹壁に癒着していたため,剝離し,捻転部の大網を切除した.今回,成人の特発性大網捻転症に対して本邦で初めて単孔式腹腔鏡下手術で治癒しえた大網捻転症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 關口 奈緒子, 上田 正射, 池永 雅一, 堺 貴彬, 高 正浩, 家出 清継, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 谷田 司, 松山 仁, 遠藤 ...
    2021 年 46 巻 4 号 p. 514-521
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代女性で,腹部の皮下腫瘤を自覚し当院を受診した.来院時,皮下腫瘤部のみ発赤と疼痛・熱感を認め,圧迫で排膿を認めた.血液検査ではCRP 14.6mg/dLと炎症反応の上昇を認めた.腹部CTでは発赤部直下腹壁内に1.7cmの線状の高吸収域を認め,1年前のCTでは同様の異物を腹腔内に認め,腸管内異物が腹壁へ穿通したことによる腹壁膿瘍と診断した.全身状態は良好であり,切開排膿・抗生剤治療後に待機的に異物摘出術を行った.エコーで異物の位置を確認し,下腹部正中切開で開腹した.腹壁に大網の癒着を切離し異物を視認できたため,把持し摘出した.異物は1cmと術前の画像で認めた異物より短径であり,遺残が疑われた.周囲の腹壁と大網を含めて追加切除し,軟線撮影で標本内に7mm大の高吸収異物が含まれていることを確認した.魚骨穿通による腹壁膿瘍は稀であり,軟線撮影により遺残なく完全切除が可能であった症例を経験したので報告する.

  • 新 みゆき, 寺島 孝弘, 山本 孝太, 宮石 彗太
    2021 年 46 巻 4 号 p. 522-528
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は完全内蔵逆位症を伴う72歳の女性で,20年前に子宮摘出術の既往あり.2017年9月に,腹部膨満と食思不振が出現し,CTで52mm大の腹腔内腫瘤を認めた.PET-CT上も腫瘤に一致してSUV max 3.4の集積を認めた.未分化多形肉腫,悪性リンパ腫,線維腫などが疑われ,腹腔鏡補助下に腫瘤摘出術を施行した.腫瘍は腸間膜から発生し,空腸に浸潤していたため,空腸合併切除を施行した.病理組織学的診断は,紡錘形細胞および膠原線維束の増生を認め,空腸間膜デスモイド腫瘍であった.術後約2年に施行したCTで,腸間膜に52mm大の腫瘤を認めた.デスモイド腫瘍再発の可能性を疑い,開腹腫瘤摘出術を施行した.病理検査の結果,デスモイド腫瘍の再発であった.完全内蔵逆位症にデスモイド腫瘍が合併した症例は非常に稀であるが,完全内蔵逆位症と悪性腫瘍の合併例の報告が散見されており,悪性の性質を備えているデスモイド腫瘍と完全内蔵逆位症との関連性が示唆された.今回われわれは,完全内蔵逆位症にデスモイド腫瘍を合併した稀な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告した.

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