2022 年 47 巻 1 号 p. 61-65
症例は72歳,女性.腹痛を主訴に来院した.CTで腹腔内遊離ガスとS状結腸の壁肥厚を認め,S状結腸癌の穿孔に伴う汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹所見ではS状結腸に腫瘤を認め,子宮底部後壁に強固に癒着していた.子宮底部前壁には10mm大の穿孔を認め,子宮内腔に膿汁が充満していた.S状結腸癌の子宮浸潤に伴う子宮留膿腫穿孔と診断し,ハルトマン手術と子宮摘出術および腹腔洗浄ドレナージ術を行った.病理所見ではS状結腸に漿膜面に露出する高分化型腺癌を認めた.子宮壁は浸潤した癌組織により全層が置換され,炎症細胞に浸潤されていた.術後集学的治療を行い全身状態は改善した.術後2年を経過した現在,無再発生存中である.本病態は,他臓器浸潤を伴う進行癌により生じた急性重症感染症であり,患者の状態に応じた適切な治療選択を行うことが肝要であると考えられた.