抄録
当科においてこの4年間に13例の食道癌術後肺塞栓症を経験した。対象は1990年より1993年までの食道癌手術315例中, 肺血流シンチにて所見を認めた13例を対象とした。発症率は13例/315例, 4.1%で他の腹部手術症例に比し有意に多かった。発症日では術後早期と後期の2相性に分けられた。症状は頻脈11例, 呼吸苦8例, 異常発汗5例であった。塞栓発現を部位別にみると13症例86病変で, LLL : 33.7%, RLL : 30.2%, その他 : 36.1%とやはり両下葉, 背側に多かった。治療はヘパリンおよびウロキナーゼを中心に施行, 予後は生存10例, 死亡3例で致死率は23.1%であった。周術期管理上その予防が重要で, 術後原因不明の低酸素血症を認めた場合, 常にこの疾患を考慮にいれ, 早期診断早期治療に努める必要がある。