抄録
大腸癌異時性肝転移に対する術中腫瘍揉み出し操作の影響を, 家兎結腸癌自然肝転移モデルを用い検討した。すなわち, 2×105個のVX-2腫瘍を家兎大腸壁漿膜下腔内に注入移植すると9/10羽に2型腫瘍が生着・増殖し, 移植後28日目で7/9羽に肝転移が観察された。この生着腫瘍に対し一定圧で用手的腫瘍揉み出し操作 (TM) を加えた。その結果, (1) 移植後14日目に20, 50,100回のTMを加えると高率 (7/9) に肝転移が形成されたが, TM回数との関連はみられなかった。 (2) TMを移植後7, 10, 14日目に行っても担癌時期別の差はみられなかった。 (3) TM直後に腫瘍切除 (大腸部分切除) すると, 肝転移は7, 10日目切除群で2/10, 14日目切除群で5/10と低下した。 (4) TM群での転移結節の肉眼形態は多結節型・周囲浸潤型が多かった。以上の結果, TMに起因した肝転移は, TMによる癌細胞の脈管内移行よりも腸管壁への器械的損傷などによる血管壁透過性亢進による可能性が大きいと推察された。それ故, 大腸癌治癒切除後の異時性肝転移は初回手術時発見困難な微小転移巣増大による可能性が高く, 術中腫瘍揉み出し操作による可能性は予想以上に少ないと推察された。