抄録
膵切離断端血流の温存が膵空腸吻合にどのように影響するかを実験的および臨床的に検討した。雑種成犬の膵左葉を5cm後腹膜から遊離すると, 断端から2cmの部位まで有意に膵組織血流が低下した。胆道・膵疾患75例に膵頭十二指腸切除術を施行した。実験結果を踏まえて, 残存膵の後腹膜からの遊離を1cm以内に留め, 膵管空腸粘膜吻合を行った38例を後期例とし, それまでの前期例37例と比較した。前期例では, 膵空腸吻合部縫合不全は4例 (11%) で, 2例の総肝動脈破綻を含め, 3例に腸腔内出血が起こった。残膵摘除およびcoil塞栓術を行った1例が止血救命できた。後期例では膵空腸吻合部縫合不全は1例 (2.9%) のみで, 残摘除により治癒した。安全な膵空腸吻合を行うためには, 膵断端の遊離を1cm以内に留め, 断端血流を温存して膵空腸吻合を行うのがよい。また, 膵空腸吻合部縫合不全による動脈破綻性出血に対しては塞栓術, 時として残膵摘除が必要である。