1996 年 21 巻 5 号 p. 897-902
同一胃内に癌と悪性リンパ腫を併発した1例を経験したので報告する。症例は49歳の男性。多発性胃ポリープにて経過観察中, 上部消化管透視にて胃体上部に潰瘍性病変を認め, 生検の結果中分化型胃癌と診断され胃全摘術を施行した。切除標本では胃底部に径2cm大のBorrmann2型病変と, 胃体上部から下部にかけてびらんを伴う顆粒状粘膜を認めた。病理組織学的検査にて前者は深達度mpの中分化型管訓腺癌, 後者は深達度smの悪性リンパ腫 (Non-Hodgikin's lymphoma, diffuse, mixed cell type) と診断された。癌腫と悪性リンパ腫は衝突病巣を形成していた。発生母地の異なる両者が同一胃内に共存する例は極めて稀で, 本邦ではこれまでに71例が報告されているにすぎず, 若干の文献的考察を加えて報告した。