日本外科系連合学会誌
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外科系医師のための腎癌の診断と治療
里見 佳昭福田 百邦
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1997 年 22 巻 2 号 p. 125-140

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抄録

外科系医師を対象に腎癌の診断と治療に関する基本的な考え方を述べた。1) 腎癌の生物学的特徴を知ることは治療の原点であり, (1) 術後10~20年に亘り再発し死亡する, (2) rapid growigとslow growing症例である, (3) 免疫機構の関与を受けやすい, (4) 造血臓器の性質をもつ, (5) 性ホルモン特にprogesteroneと関係がある, (6) 周囲への浸潤の少ない癌である, (7) 初期にはリンパ行性転移が少ないなどの特徴を理解する必要がある。2) 手術に際しては, (1) 転移のある腎癌の腎摘除術, (2) 腎部分切除術, (3) リンパ節郭清術, (4) 副腎摘除術の意義などについてはまだcontroversialである現状をのべた。3) 転移巣の治療に際しては原則としては, slow growing症例は長期生存が可能であり積極的に手術する, rapid growing症例では多くは1~2年で死亡するので保存的治療をする。その分類法も示した。4) 化学療法は有効なものはないに等しい。5cmを越える腎癌は術後半数以上が再発するので, 術後補助法の必要性を痛感するが現状では良い方法がない。腫瘍血管新生阻害剤でもあるmedroxyprogesterone acetateの再検討が望まれる。

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