1997 年 22 巻 2 号 p. 259-264
後腹膜脂肪肉腫における外科的治療上の問題として, 摘除後の再発率が高いことが挙げられ, 再発機序としては腫瘍偽被膜の周囲への浸潤の取り残し (tumor spillage) が重要視されている。自験例は65歳男性で, 1987年の初回摘除術後も局所再発を反復し, その都度, 計7回の摘除術を行いpolysurgeryとはなったが, 初回術後9年余の現在, 良好なQOLを保持しつつ健在である。本症の切除範囲に関する安全確実な指標はなく, また無用な広範囲合併切除も手術侵襲, QOLなどの面から慎むべきで, 本例は本症の治療方針の選択に貴重な示唆を与える例と考えられた。