1997 年 22 巻 2 号 p. 254-258
症例は65歳男性, 心窩部痛にて発症し, 疼痛は増強するとともに下腹部に移動した。翌日, 当院内科を受診し, 急性腹膜炎を疑われ当科を紹介された。右下腹部に強い圧痛と筋性防御が認められたが, 腹部単純X線撮影では遊離ガス像は存在しなかった。腹部超音波検査で, ダグラス窩に腹水の貯留が認められたが, 虫垂は描出されなかった。血液検査で白血球数増多, CRP高値のため, 急性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。開腹時, 膿性腹水の貯留と同盲弁より4cm口側の回腸の腸間膜側に, 膿苔の付着した径0.5cm大の陥凹部が認められた。盲腸および上行結腸に憩室が散在していた。回盲部切除術を施行し, 術後は順調に経過した。病理学的所見では陥凹部に一致する回腸粘膜が筋層を貫いて嵌入し, 強い炎症細胞浸潤が認められ回腸憩室炎穿孔と診断された。回腸憩室炎穿孔は比較的稀な病態であり, 文献的に考察を加えた。