1997 年 22 巻 6 号 p. 854-862
T3, T4諸隣接臓器浸潤をみる肺癌の拡大手術を34症例に施行した。全症例の1, 3, 5生率は, それぞれ62.0%, 35.3%および24.0%であった。一方, 近年において徐々に判明されつつあるように, 胸壁, 心膜および左房浸潤例はその合併切除により予後を著明に改善し, われわれの該当臓器の5生率も33.4%, 41.7%および17.0%と満足すべき結果を得た。しかし残念ながら, 大動脈系および横隔膜の浸潤例の予後が不良であった。なお, 組織型と予後との相関をみると, 扁平上皮癌は腺癌に比べて良い予後を示した。多臓器にわたって浸潤を示す症例に比べ, 単一臓器の方が予後が良かった。また, リンパ節転移陽性度の高いものほど予後が不良であった。今までの経験から, 浸潤の有無, 浸潤範囲の把握および手術方針の決定等に, 経食道内視超音波および術中超音波診断法が有効で, 肺癌外科に積極的に取り入れるべき補助診断法と考えている。