1998 年 23 巻 4 号 p. 649-652
大腸mp癌の至適リンパ節郭清範囲を明らかにする目的で, 術前に評価可能な因子と組織学的リンパ節転移について検討し, 組織学的リンパ節転移, 郭清度と再発から郭清範囲について検討した。さらに腹腔鏡手術への適応についても検討した。対象は当科で切除された大腸mp癌の61例である。今回の検討では多くの施設で腹腔鏡下大腸切除術の適応部位を上部直腸までとしているため, 結腸とRs・Raの上部直腸 (39例) と, Rb・Pの下部直腸 (22例) に分けて検討した。結腸・上部直腸癌に対する郭清範囲はD2郭清までの症例が多かったが, そのリンパ節転移はすべて2群までであり, 根治度Aの症例に再発はなかった。下部直腸癌の郭清範囲については一定の見解は見いだせなかった。このことから結腸・上部直腸癌に対してはD2郭清で十分であることが示唆され, 確実なD2郭清が可能であれば, 腹腔鏡補助下手術の適応となると考えられた。