抄録
原発性卵巣癌の術後経過観察中に, 腹腔内再発所見を認めず, 腹壁内に孤立性非連続性に転移をきたしたまれな症例を経験した。症例は48歳の女性で1992年10月27日子宮内膜症および卵巣腫瘍にて子宮全摘および両側卵巣付属器切除術を施行された。なお, その際術中に腫瘤破綻をきたした。術後卵巣癌と病理診断され化学療法を施行された。1996年11月下腹部の腫瘤に気付き1997年2月当科紹介。下腹部腹壁内に5×7cm大の腫瘤あり。US・CT・MRIにて卵巣癌の腹壁内孤立性転移と診断し手術施行した。皮膚・膀胱・腹膜への浸潤はなく, 腹腔内にも再発の徴候はなかったが, 両側外腸骨リンパ節・左閉鎖リンパ節への転移を認めた。implantationによる術創への転移という比較的まれな再発形式であり, 術中の愛護的操作の必要性が再認識された。