抄録
長時間虚血に先行する短時間の虚血によって虚血耐性を獲得する。これは, Ischemic preconditioning (IP) と呼ばれ, 主に心筋において研究されてきたが, 今回ラット肝において検討をおこなった。虚血実験4週間前に脾臓有茎皮下固着を施した。肝虚血は, 肝十二指腸靱帯をclampすることにより全肝虚血とした。IPの回数・時間を変化させたものを全6群設定し, 60分の虚血―180分の再灌流後, 検体を採取した。結果, IPとしては5分虚血でも15分虚血でも肝細胞保護効果が認められた。しかし, 5分の虚血に対し15分の再灌流を施すとその効果は消失した。心筋では短時間虚血後のIP効果持続期間 (window) が1~2時間存在すると言われるが, 肝ではIPにより獲得された細胞保護効果が, 心筋より早く消失してしまう可能性が示唆された。