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太田 哲生, 田島 秀浩, Ayman ELNEMR, 北川 裕久, 伏田 幸夫, 西村 元一, 藤村 隆, 萱原 正都, 清水 康一, 三 ...
1999 年24 巻2 号 p.
125-130
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
Sulfhydryl-reactive reagent (SH試薬) を癌細胞に短時間反応させた場合, 癌細胞の細胞外マトリックスへの接着が阻害されるか否かを検討した。 [材料と方法] 高率に腹膜播種を起こすAsPC-1細胞株を用い, SH試薬として活性型ランソプラゾール (AG-2000) を使用した。そして, (1) 1時間AG-2000と反応させたAsPC-1の細胞外マトリックスに対する接着能をadhesion assayで測定, (2) in vivoの実験では, AG-2000と1時間反応させたAsPC-1細胞を1×106個ヌードマウス (n=10) の腹腔内に注入して腹膜播種の有無を検索し, 未処理群 (n=10) と比較した。 [結果] adhesion assayでは接着癌細胞数はいずれもAG-2000の濃度依存姓に減少し, 1mMではほぼ完全に接着が阻害された。ヌードマウスの腹腔内投与では, 未処理群が高度腹膜播種のため全例8週以内に癌死した。これに対し, 処理群では死亡した1匹を含め腹膜播種は30%に認められたが, 他の7匹には腹膜播種はみられなかった。 [結語] AG-2000は短時間の反応でAsPC-1細胞の細胞外マトリックスへの接着を強く阻害したことより, 消化器癌の腹膜播種予防薬として臨床応用できる可能性が示唆された。
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高田 登, 原田 和則, 吉仲 一郎, 前田 将臣
1999 年24 巻2 号 p.
131-138
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
超高齢化医療圏 (65歳以上の高齢化率24.7%) における高齢者手術の現況と問題点を検討した。全手術1770例中, 高齢者 (75歳以上) は400例 (22.5%) であった (1992.4~1997.12) 。75歳以上の高齢者について, (1) 悪性腫瘍の手術では, 非高齢者群に比べて大腸癌, 膵頭部, 胆道系の癌の占める割合が増加していた。 (2) 緊急手術の割合が26.8%であり, 85歳以上の超高齢者群に顕著 (48.6%) であった。 (3) 術後合併症で特徴的なことは, 術後せん妄を代表とする術後の精神障害であり, 24.8%にみられ, その傾向は加齢とともに顕著であった。 (4) 術前の臓器障害が91.3%にみられ, 複数臓器障害例も多く, このことが高齢者の術中・術後の管理および近接予後に関しての問題点と思われた。 (5) 手術死亡率は2.3%で, 他の年齢層 (1.5%) と差はなかった。しかし, 術後にADL1) (Activities of daily living : 日常生活動作) の低下した症例が4.0%にみられ, とくに85歳以上例では9.1%で低下した。超高齢者の手術においてはADLの維持にも十分に心がけるべきである。
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岡村 吉隆, 望月 吉彦, 飯田 浩司, 森 秀暁, 山田 靖之, 杉田 洋一, 嶋田 晃一郎
1999 年24 巻2 号 p.
139-142
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
高齢者冠動脈バイパス術の特徴と問題点を検討した。冠動脈バイパス術 (CABG) 施行例400例を70歳以上の高齢者群98例と70歳未満の若年者群302例に分け, 術前因子および手術成績について比較した。高齢者では, 女性, 左主幹部病変, 上行大動脈病変, 脳合併症を有する率が有意に高かった。平均グラフト本数, 動脈グラフト使用率, IABP使用率, ICU滞在日数に差はなかった。病院死亡率は若年者群は待機例で3.9%, 緊急例で10.6%, 高齢者群は待機例で1.3%, 緊急例で27.7%であった。結論として (1) 高齢者では他の手術危険因子の合併が多いが待機的手術では若年者と手術成績に差はない。 (2) 高齢者では緊急手術と待機手術の成績の差が著しく, 早期診断, 早期手術の啓蒙が重要である。
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麻田 達郎, 小澤 修一, 樋上 哲哉, 大保 英文
1999 年24 巻2 号 p.
143-147
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
破裂性真性胸部大動脈瘤に対し, 発症より14日以内に緊急手術を行った28例の治療上の問題点について検討した。内2例は感染性吻合部動脈瘤破裂であった。28例中15例が院内死した (院内死亡率53.6%) 。7例は術中に出血のコントロールがつかず台上死した。手術遂行可能例21例の院内死亡率は38.1%で上行, 弓部, 下行, 胸腹部それぞれ50%, 33.3%, 33.3%, 50%であった。術前ボリューム負荷にもかかわらず血圧の安定が得られぬまま手術に至った重症ショック例6例は全例死亡し, 内5例は台上死であった。また感染性吻合部動脈瘤破裂2例も出血のため台上死し, かかる症例の救命は極めて困難と考えられた。一方, 手術遂行可能例の手術成績を1991年1月前後で比較すると, 近年の手術手技や各種補助手段の改善に伴い, 院内死亡率は57.1%より28.6%まで改善し (p<0.05), 成績の向上が認められた。
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松村 衛磨, 田中 晃, 奥野 清隆, 安富 正幸
1999 年24 巻2 号 p.
148-154
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
食道癌の神経浸潤をラミニン染色により組織化学的に検討し, 癌再発との関係および予後に与える影響を明らかにしようとした。壁深達度が固有筋層以上の食道癌118例を対象とした。神経浸潤陽性は56例 (47.5%) であった。神経浸潤はリンパ節転移, リンパ管侵襲と相関関係を認めた。また, 神経浸潤と局所再発, リンパ節転移, リンパ管侵襲とリンパ行性再発に相関関係を認めた。生存率の検討では, 神経浸潤とリンパ節転移が有意な予後因子であった。さらに, 多変量解析より神経浸潤はリンパ節転移と同様に重要な予後因子であることが明らかとなった。また, 壁深達度が他臓器浸潤ありと診断された21例に術前放射線治療を行った。放射線治療はリンパ管侵襲・静脈侵襲には有効であったが, 神経浸潤に対しては効果を認めなかった。このことより, 神経浸潤に関連した局所再発に対する予防的な放射線治療には限界があることが示唆された。
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西山 仁子, 安西 春幸
1999 年24 巻2 号 p.
155-161
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
E-cadherinとMMP2のmRNA発現と総合的進行胃癌および再発死亡との関連について, in situ hybridization法によりD2以上の切除が行われた胃癌63症例を対象として検討を行った。E-cadherin, MMP2ともに, 総合的進行程度との関連はなかったが, 死亡症例ではE-cadherinのmRNAの発現が低い傾向を認めた。MMP2とE-cadherinの発現比 (M/E比) の検討では, 総合的進行程度とともにM/E比は高くなる傾向を認め, 死亡例ではM/E比が有意に高値であった (p<0.001) 。以上よりin situ hybridization法によるMMP2とE-cadherinのmRNA発現比は胃癌の悪性度の指標になりうると考えられた。
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上田 順彦, 小西 一朗
1999 年24 巻2 号 p.
162-166
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
急性腸間膜動脈閉塞症の診断と治療上の問題点を明らかにすることを目的として, 11例を生存群6例 (S群) と死亡群5例 (D群) に分け, 臨床所見, 組織像, 予後について検討した。初発症状, 発症から治療開始までの時間では両群間に明確な差はなかった。ただし塞栓症, 血栓症は急性発症であったのに対して, 非閉塞性腸間膜梗塞症 (NOMI) の7例中6例は亜急性発症であった。しかもNOMIの3例が死亡した。虚血範囲はS群では小腸または大腸に限局し, 小腸壊死例では粘膜下層までに留まっていたものが4例中3例であった。これに対してD群では全例小腸と大腸にまたがり, かつ全層壊死であった。またD群では術後, 別の部位の穿孔や縫合不全, 残存腸管からの出血の持続など虚血所見を4例に認めた。以上の成績より, 腸管膜動脈閉塞症の予後改善には早期の診断と治療開始により切除腸管量を減らすことと, 術後の残存腸管の血流保持が課題であると考えられた。
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林 智彦, 西村 元一, 北川 裕久, 藤村 隆, 橋本 哲夫, 萱原 正都, 清水 康一, 太田 哲生, 米村 豊, 三輪 晃一
1999 年24 巻2 号 p.
167-171
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
直腸癌は肝, 肺再発とともに局所再発が多いため, 予防と早期診断が重要である。そこで, 直腸癌局所再発例の臨床病理学的特徴について比較検討し, 危険因子の検索を行った。過去21年間に当科で初回手術を施行した進行直腸癌根治度Aは194例で, その内局所再発と診断された10例 (5.2%) を対象とした。腫瘍占居部位別ではRbの局所再発率が7.5%と最も高率であった。リンパ節転移の高度な症例, リンパ管侵襲陽性例に局所再発が多く認められた。局所再発10例の内4例に再切除が施行され, 初回手術から再発確認までは平均2年2カ月で, 再切除後の予後は平均1年8カ月であった。以上より進行直腸癌術後は局所再発を念頭に置いた厳重な経過観察が重要で, 再発例には早期診断と治療が必要であると考えられた。
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佐藤 美信, 前田 耕太郎, 丸田 守人, 内海 俊明, 藤崎 真人, 千葉 洋平
1999 年24 巻2 号 p.
172-177
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
従来の経肛門的局所切除術 (PAE) と新しく開発したE式およびF式開肛器と自動縫合器を用いた経肛門的局所切除術 (MITAS) について臨床的に比較検討した。対象は経肛門的局所切除術が施行された直腸腫瘍61例 (62病変) で, 術式はMITAS43例 (44病変), PAE18例であった。肛門縁から病変までの距離はPAEの4.9cmに比べてMITASでは9.3cmと有意に高位で, 腹膜反転部以上に局在する症例が有意に多かった。手術時間はMITASでは平均24.7分, PAEは40.9分で, 出血量はMITASでは平均19.6g, PAEは50.0gであった。術後経口摂取開始までの日数はPAEに比べてMITASは有意に短縮していた。MITASでは86.4%の病変で筋層以上の切除がなされていた。合併症はPAEで縫合不全を2例, MITASで後出血を1例に認めた。MITASはすべての部位の早期直腸癌の根治術として, また根治性確認の手段として有用なminimally invasiveな術式と考えられた。
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渡会 伸治, 高橋 徹也, 田中 邦哉, 望月 弘彦, 金谷 洋, 藤井 義郎, 遠藤 格, 簾田 康一朗, 郷 克己, 関戸 仁, 長堀 ...
1999 年24 巻2 号 p.
178-181
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
原発性肝細胞癌72例を対象に, 肝切除後の腹腔内感染症の危険因子を検討し予防対策を考慮した。腹腔内感染症は13例 (肝切離面感染10例, 右横隔膜下膿瘍3例), 17.6%に認め, 原因菌はブドウ球菌を中心とした表在性常在菌が多く, 主としてドレーンを介した逆行性感染と考えられた。術前・術中の危険因子は手術時間と出血量・輸血量であった。術後因子として, 開放式ドレナージは閉鎖式ドレナージと比べ, また胆汁漏や後出血を併発した症例で有意に感染症発生率が高かった。さらに術後感染症発生判別点で高危険群と判定された症例に対して, 術後早期から経腸栄養を行い有意に術後感染を減少させることができた。以上より予防対策としては, 術中は出血量を少なくし, 胆汁瘻や後出血を合併しないように留意し, 術後は早期より経腸栄養を施行し, ドレナージは閉鎖式を原則として胆汁漏がないと判定した時点で早期に一期的に抜去することと思われた。
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東野 健, 大里 浩樹, 今本 治彦, 蓮池 康徳, 高塚 雄一
1999 年24 巻2 号 p.
182-186
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
大腸癌肝転移の治癒切除後の再発予防目的としての肝動注化学療法の有用性を間欠動注および予防動注療法について検討した。1986年から3年間の11例にADMあるいはMMCの間欠動注を行い, 同時期までの32症例と比較したが無再発生存率, 累積生存率とも明らかな差を認めず, 再発予防効果は認めなかった。1993年から1995年の症例では, 5FUの持続動注の予防効果についてrandomized studyを行った。6週間で12gを投与した動注群 (n=9) の無再発生存率は1, 2, 3年とも77.8%で, それぞれ50.0, 30.0, 20.0%であった対照群 (n=10) より有意に良好であった (p=0.0338) 。累積生存率では有意な差は認めなかったものの, 動注群では良好な傾向を認めた。期間を限定した5FUの予防動注は肝切除後の再発予防に有用であると考えられた。
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浅見 拓史, 小山 勇
1999 年24 巻2 号 p.
187-193
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
長時間虚血に先行する短時間の虚血によって虚血耐性を獲得する。これは, Ischemic preconditioning (IP) と呼ばれ, 主に心筋において研究されてきたが, 今回ラット肝において検討をおこなった。虚血実験4週間前に脾臓有茎皮下固着を施した。肝虚血は, 肝十二指腸靱帯をclampすることにより全肝虚血とした。IPの回数・時間を変化させたものを全6群設定し, 60分の虚血―180分の再灌流後, 検体を採取した。結果, IPとしては5分虚血でも15分虚血でも肝細胞保護効果が認められた。しかし, 5分の虚血に対し15分の再灌流を施すとその効果は消失した。心筋では短時間虚血後のIP効果持続期間 (window) が1~2時間存在すると言われるが, 肝ではIPにより獲得された細胞保護効果が, 心筋より早く消失してしまう可能性が示唆された。
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鈴木 康太, 北村 朋之, 渡辺 賀寿雄, 坂本 英雄, 冨士 幸蔵, 柴崎 裕, 井上 克己, 小川 良雄, 渡辺 政信, 島田 誠, 中 ...
1999 年24 巻2 号 p.
194-197
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
尿管結石に対する経尿道的尿管砕石術 (TUL) の有効性を結石の部位や長径, 砕石装置別に評価した。当科にてTULを施行した33例39結石を対象とした。結石部位は上部尿管16結石, 中部尿管7結石, 下部尿管16結石であった。結石の長径は10mm以下が25結石, 10mmを越えるものが14結石であった。使用砕石装置は電気水圧式砕石装置 (EHL) 14結石, 空圧式結石破砕装置 (リソクラスト) 18結石, EHL+リソクラスト5結石, ホルミウム・ヤグレーザー2結石であった。治療成績は, 術後1カ月の時点で結石が完全に消失したのは部位別では, 上部尿管37.5%, 中部尿管57.1%, 下部尿管68.8%であった。砕石装置別では, EHL単独42.9%, リソクラスト単独72.2%, EHL+リソクラスト20%, ホルミウム・ヤグレーザー50%であった。以上の結果よりEHLに比し, リソクラストやレーザーは治療効果向上に有効と思われた。
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三方 律治
1999 年24 巻2 号 p.
198-202
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
1986年から1995年までに初めて入院治療し, 病理組織学的診断の確定した膀胱癌230例を対象に, 5年間隔で前半群102例と後半群128例とに分割して臨床的検討を行った。前後半群で性別に変化はなかった。平均年齢は前半群65.98歳後半群66.13歳で全く差はなかったが, 年齢分布では, 後半群では60歳代から70歳代にピークが移っていた。臨床症状, G分類, 初回外科的治療法は前後半群で差はなかったが, 後半群ではTaが増えT2が減少していた。全230症例では, 進展度の進むほど組織分化度は低くなり, 70歳以上では深部筋層以上 (T3) に浸潤する頻度が高かった。全230症例について1998年5月に最終予後調査を行って生存率を求めて, 予後因子の検討をしたが, 膀胱癌の予後は組織分化度よりその進展度により多く影響されていた。
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富田 涼一, 五十嵐 誠悟, 池田 太郎, 萩原 紀嗣, 丹正 勝久, 宗像 敬明, 藤崎 滋, 福澤 正洋
1999 年24 巻2 号 p.
203-207
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
残便感, 排便困難, 便秘などの有症状rectocele例 (34例, 全例女性, 24~79歳, 平均55.4±16.8歳) の病態解明を目的に正常排便例を対照 (10例, 全例女性, 16~66歳, 平均46.9±21.7歳) として, 排便状態, defecography所見, 陰部神経伝導時間を比較検討した。rectocele例では, 主訴は残便感が最も多く, 排便時怒責を有する例が明らかに多かった。そして, 経産婦が多い傾向を示した。なお, 約半数の症例がdefecography所見で会陰下垂を伴っていた。陰部神経伝導時間は左右差なく, rectocele例が対照例に比較して延長する傾向がみられた。以上よりrectocele例での陰部神経伝導時間の延長の原因に, 残便感から来る排便時怒責, さらに分娩による腹圧の上昇が会陰下垂を生じ, 左右側の陰部神経を過伸展し, 神経損傷を来している可能性が示唆された。
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森永 聡一郎, 赤池 信, 杉政 征夫, 武宮 省治
1999 年24 巻2 号 p.
208-210
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
当科で経験した多科共同手術57例を対象として, 癌専門病院における共同手術の現状と問題点を検討した。共同手術は婦人科, 泌尿器科との組み合わせが多く, 疾患は子宮・卵巣・膣癌と結腸・直腸癌が多かった。28.1%が再発症例であった。共同手術とした理由の大半は拡大切除や再建を行うためであった。術前から貧血, 低タンパク血症を高率に併存し, 化学療法や放射線治療を受けている症例が33.3%にみられた。手術時間, 術中出血量, 術中輸血施行率は標準的手術より有意に増加し, 術後合併症の頻度も有意に高かった。癌専門病院での共同手術は, 高度進行癌や再発癌に対する拡大手術が多い。手術侵襲が大きく術前状態も不良なため術後合併症が多いのが現状である。各科の専門的な技術を活用し, より安全な手術をめざして共同手術を行っているが, 更なる技術の向上と共同システムの確立に努める必要がある。
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益子 健男, 石井 信一, 長沼 宏邦
1999 年24 巻2 号 p.
211-215
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
93年5月以降の5年間に体外循環を用いて心・大血管手術を行った75歳以上の高齢者27例について手術成績・術中管理・術後遠隔期における問題点を検討した。術式はCABG16例, 胸部大動脈瘤手術9例 (解離6例, 真性瘤3例), VSP1例, AVR1例である。手術成績は死亡3例 (11.1%) で全て緊急例 (CABG2例, TAA1例) であり, 待期例には死亡例はなかった。退院後の遠隔死亡は6例でいずれも他臓器死 (癌死3例, 脳梗塞2例, 腎不全1例) であった。また, 術中に循環補助を要した症例は75歳以下の11.1%に対して25.9%と有意に循環補助率が高く, 原因として体外循環離脱後の体温低下による心機能低下が考えられた。さらに, 高齢者では術中輸血率が75歳以下の60.8%に対して92.5%と高く輸血による免疫能抑制などの弊害が懸念された。今後, 成績の向上を図る上で緊急例に対するoff pump CABG, 急性A型解離に対しては上行置換にとどめるなどの低侵襲手術を心がけ, さらに内科医への啓蒙, 常温体外循環の採用・輸血の軽減, 単科に捕われない術後管理などが必要である。
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Masayuki KOKUMA, Tetsuo SHIBUYA, Kiichirou UCHIYAMA, Kouan ORII, Shinj ...
1999 年24 巻2 号 p.
216-221
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
So-called carcinosarcoma of the esophagus is a rare tumor which is usually of the polypoid type. We experienced an extremely rare case of double cancer consisting of ulcerative and infiltrative type carcinosarcoma with concurrent gastric cancer. The patient was a 54 year-old male whose main complaint was dysphagia. Ulcerative and infiltrative esophageal cancer was found in the lower thoracic and abdominal esophagus, and gastric cancer in the greater curvature of the gastric angle. In a preoperative biopsy, squamous cell carcinoma was diagnosed in the esophagus, and total thoracic esophagectomy and total gastrectomy were performed. Pathological findings showed sarcoma-like proliferation of spindle cells in the esophageal tumor which was positive for keratin staining and negative for vimentin staining. So-called carcinosarcoma was diagnosed. No remote metastasis was found during the operation, but after 1 year and 7 months, right solitary lung metastasis and right cervical lymph node metastasis were observed. The lung tumor was resected and radiotherapy was performed, but the patient died 2 years and 6 months after the initial operation. From a study of reports of so-called carcinosarcoma of the esophagus in Japan, it was evident that lymph node metastasis of tumors with a small diameter is found from the shallow invasion stage, and recurrences often occur in the cervical lymph nodes. Multidisciplinary treatment, mainly consisting of total thoracic esophagectomy with consideration given to lymph node dissection in the cervical region, is required.
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矢野 正雄, 猪口 正孝, 白木 康夫
1999 年24 巻2 号 p.
222-225
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
出血性胃潰瘍に対する緊急手術は迷走神経切離を伴う幽門側胃切除が主流であった。しかし内視鏡的止血術が進歩し, 出血性胃潰瘍のために手術に至る症例は, 全身状態不良な症例が多い。薬剤の発達, 手術の低侵襲化, 残胃癌の問題等を鑑みると, 幽門側胃切除術は過大術式ではないかと考えた。そこでわれわれは出血性胃潰瘍手術例に対し, 全例に低侵襲の止血縫合術を施行している。全例全身状態不良であったが, 再出血例は認めていない。極めて迅速, 簡便, 確実で有効であり低侵襲な術式である。救命だけではなく, 胃機能温存, 残胃癌等の問題を考えても, 今後第1選択術式として妥当なものと考えられた。
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田中屋 宏爾, 小長 英二, 竹内 仁司
1999 年24 巻2 号 p.
226-228
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
症例は58歳, 男性。平成6年2月肉眼的血尿を認め当院泌尿器科を受診した。諸検査にて右腎癌と診断し, 同年3月15日, 開腹下に手術を施行した。開腹時の術中検索にて胃癌を指摘し, 家族の了解の下に一期的に右腎摘出術・幽門側胃切除術D2を施行した。病理診断は腎細胞癌および胃腺扁平上皮癌であった。術後経過良好にて退院し, 再発の徴候無く経過観察中である。胃腎重複癌は比較的まれであるが, 重複癌などの可能性も念頭においた充分な腹腔内検索の重要性があらためて認識された。
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Shouichi UCHIYAMA, Shigeru IMAI, Arichika HOSHINO, Tetsuo SHIBUYA
1999 年24 巻2 号 p.
229-232
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
フリー
We herein report a case of a spontaneous fistula that developed from a carcinoma of the sigmoid colon that discharged through the umbilicus. A 72-year-old man was referred to our hospital for an examination of a foul odorous and purulent umbilical discharge. Six months prior to admission he complained of enuresis and ischuria for cystitis at the urological clinic of our hospital. The preoperative computed tomography and colonoscopy findings suggested a colo-umbilical fistula arising from the carcinoma of the sigmoid colon. At laparotomy, a 8-cm diameter mass, involving the anterior abdominal wall and the sigmoid colon, was found and it closely adhered to the upper aspect of the urinary bladder. An en bloc resection was thus performed. Its specimen showed an Borrmann 2-liked carcinoma of the sigmoid colon with an orifice of the colo-umbilical fistula, which was composed of a inflammatory tissue and no neoplastic cells were detected. This is the first case report of a spontaneous colo-umbilical fistula caused by a perforation of colon carcinoma, which demonstrated a pus discharge from the umbilicus. Carcinoma of the colon should thus be considered as a cause of an unexplained umbilical discharge.
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奥田 栄樹, 大杉 治司, 徳原 太豪, 紹野 進, 高田 信康, 竹村 雅至, 西村 良彦, 福田 淑一, 加藤 裕, 李 栄柱, 森村 ...
1999 年24 巻2 号 p.
233-237
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
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放雑線腸炎に起因する消化管通過障害に対し, 腸切除が有効であった2例を報告する。症例1は69歳女性。症例2は58歳女性。ともに子宮頸癌に対し子宮全摘術, 術後放射線照射を受け, 照射終了6カ月後より腹部膨満が出現し保存的治療で軽快せず, イレウス管からの造影にて回腸の器質的狭窄を認めたため手術を行った。手術所見は2例とも回腸は肥厚し屈曲, 癒着しており, 症例1は回腸部分切除, 症例2は回盲部切除を行った。病理組織学的に漿膜下組織の線維化を認めた。術後経過は良好で, それぞれ術19, 33カ月後の現在, 消化管通過障害の再発を認めていない。放射線腸炎は晩期には狭窄による通過障害をきたす。しかし強度の癒着や縫合不全を危惧し, 長期にわたり保存的治療を行い, QOLを損なっていることが多い。今回われわれは術前挿入留置したイレウス管を指標に不要な癒着剥離を避け, 腸切除, 再建を行い, 良好な結果を得た。
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堀口 明彦, 宮川 秀一, 花井 恒一, 水野 謙司, 三浦 馥
1999 年24 巻2 号 p.
238-241
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
ジャーナル
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肝硬変, 肝癌, 胆嚢癌合併患者に対して胆嚢全層切除, 脾摘後の大量難治性腹水に対して, Transjugular intrahepatic portosystemic shunt (以下TIPS) が有効であった1例を経験したので報告する。症例は55歳の女性で肝機能障害で通院中, 腹部超音波で肝と胆嚢に異常を指摘され紹介入院となった。血液検査で血球減少を認めた。CTで肝右尾状葉の腫瘤と胆嚢底部に充満した腫瘤を認めた。内視鏡的逆向性膵胆管造影で胆嚢底部の隆起性病変と, 膵胆管合流異常を認めた。以上より, 肝硬変, 肝癌, 胆嚢癌の重複癌と診断した。血球減少に対して, 部分的脾動脈塞栓術を施行し, 血小板は15×104/mm3まで上昇した。肝機能が不十分なため, 肝癌に対しては内科的治療を行い, 胆嚢全層切除術, 脾摘術を施行した。術直後から急激な腹水増量が出現したため, TIPSを施行した。その後, 腹水は減少し, 肝機能も改善した。
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森田 敏弘, 熊沢 伊和生, 堅田 昌弘, 山田 慎
1999 年24 巻2 号 p.
242-246
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
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胆嚢は解剖学的な位置関係から外力による損傷を受けにくい臓器とされており, 本邦での胆嚢損傷の報告は, 44例をみるにすぎない。今回われわれは, 胆嚢損傷の2例を経験したので報告する。症例1は15歳, 男性。落下により上腹部を強打し, 右上腹部激痛を訴え来院した。腹部CT検査にて胆嚢周囲の液体貯留が認められた。開腹すると, 胆嚢底部に小指頭大穿孔が認められた。症例2は51歳, 男性。交通事故にて上腹部と胸部を強打した。右上腹部激痛と呼吸困難を訴え来院した。腹部超音波検査, 腹部CT検査にて胆嚢周囲に液体貯留が認められた。開腹すると, 胆嚢周囲漿膜下に広範に胆汁の浸潤がみられたが, 胆嚢に穿孔は見られず, 胆嚢粘膜の亀裂が認められた。いずれも胆嚢摘出術を施行し, 経過良好であった。
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宮 喜一, 森 茂, 加藤 元久, 杉山 保幸, 国枝 克行, 梅本 敬夫, 深田 代造, 佐治 重豊, 下川 邦泰
1999 年24 巻2 号 p.
247-251
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
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症例は35歳男性で, 1995年5月会社の健康診断で左肋骨弓下の腫瘤を指摘され, 某医で検査後, 脾腫瘍の診断で当科に入院した。入院時所見で, 体表リンパ節は触知せず, 腹部に左季肋下で3横指突出した弾性硬, 表面平滑な腫瘤を触知した。血液検査所見で, 白血球数は増加していたが, リンパ球数は正常で, CD19陽性細胞比率は0.8%と低かった。骨髄生検や胸部写真で異常を認めなかった。腹部超音波検査で, 脾臓は腫大し粗造な内部構造を示し, CTでもび慢性に散在する低吸収域を, 血管造影で, 脾内血管の圧排像を認めた。同年7月2日に周囲リンパ節郭清を伴う脾摘出術を行った。摘出脾臓重量は1950gで全体が黄白色の小結節で占められていた。病理診断はfollicular lymphoma, medium-sized cell type (B) で, 膵被膜浸潤と脾門部に1個のリンパ節転移を認めた。術後, 減量VEPA療法を1クール施行し, 術7年経過した現在, 再発徴候を認めず, 健在である。
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島本 強, 片桐 義文, 味元 宏道, 鬼束 惇義, 広瀬 光男
1999 年24 巻2 号 p.
252-255
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
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症例は75歳, 男性。左下腹部腫瘤を自覚し受診, 精査治療目的で入院した。腹部超音波検査, 腹部CTで左骨盤腔内に径約7cmの腫瘍を認めた。腫瘍は後腹膜にあり左尿管, 総腸骨動脈と関係は認めなかった。嚢胞内容液は淡黄色, 漿液性で240mlであった。病理組織検査で嚢胞壁は線維組織に富んでおり嚢胞壁に上皮細胞を認めなかった。後腹膜漿液性嚢腫と考えられた。後腹膜漿液性嚢腫は女性例には全例上皮細胞を認めると報告されているのに対して, 男性報告例は自験例のように上皮細胞を認めない例もある。女性例と男性例では組織学的に発生母地は異なる可能性があり, 後腹膜漿液性嚢腫として一括していいものか疑問で今後, 後腹膜嚢腫の分類および定義の再考が必要であると考えられた。
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竹國 恭司, 平塚 正弘, 古河 洋, 今岡 真義, 石川 治, 甲 利幸, 佐々木 洋, 亀山 雅男, 大東 弘明, 安田 卓司, 村田 ...
1999 年24 巻2 号 p.
256-259
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
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従来, 隆起型粘膜内癌ではリンパ節転移は非常にまれとされ, 内視鏡的粘膜切除術の適応となっているが, われわれの施設ではリンパ節転移を認めた隆起型粘膜内癌2例を経験した。これらはともに分化型で, リンパ管侵襲, 静脈侵襲はなく, 最大径が20mm以上であった。転移リンパ節は最も近位番号のリンパ節であった。他施設からの報告をあわせると, 転移部位は胃下部では3番, 4番, 6番リンパ節, 胃中部では3番リンパ節であったが, 隆起型粘膜内癌においてリンパ節転移例の明らかな特徴はなかった。さらにこれらの症例の周囲粘膜の性状を調べたが, 背景粘膜の性状からも特徴は指摘できなかった。これらのことから20mm以上の隆起型粘膜内癌においては, 一部リンパ節郭清を含む縮小手術の適応であると考える。
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脳室周囲白質軟化症
吉岡 博
1999 年24 巻2 号 p.
260
発行日: 1999/04/26
公開日: 2009/08/13
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