日本外科系連合学会誌
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人工血管を用いた総肝動脈再建を伴う左上腹部内臓全摘術を施行した膵体部癌の1例
山本 雅明山城 一弘大島 秀紀江副 英理平田 公一
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キーワード: 総肝動脈再建
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1999 年 24 巻 6 号 p. 900-904

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抄録

人工血管を用いた総肝動脈再建を伴う左上腹部内臓全摘術を行い, 良好に経過した1例を経験した。症例は54歳女性。近医でCA19-9の高値と腹部CT検査で膵の異常を指摘され, 精査加療目的で1998年4月6日に当院に入院した。術前の諸検査から膵体部癌stage IVbと診断し, 癌が腫大リンパ節とともに一塊となり総肝動脈と脾動脈の分岐部まで浸潤していると推測した。原発巣の切除のために腹腔動脈の切離を必須と考え, 総肝動脈血行再建を伴った左上腹部内臓全摘術を予定し, 6月16日に手術を施行した。血行再建は腹腔動脈根部から総肝動脈末梢側断端をpolytetrafuluoroethylene (以下PTFE) グラフトを用い, 端々吻合再建した。術後経過は非常に良好で肝機能異常もまったく認めず, 術後全身補助化学療法施行後, 退院となった。腹部手術における主要血管の血行再建のグラフトとして, 人工血管は手術時間の短縮などの利点があり, 極めて有用と思われた。

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