抄録
症例は62歳, 女性。左乳房に腫瘤を触知し, 当科を受診した。初診時左乳房A領域に弾性硬で周囲との境界不明瞭な直径約1.5cmの腫瘤を触知した。胸筋固定や乳頭からの異常分泌は認められなかったが, 同部にDimplingを認めた。軟X線撮影では粗大石灰化とspiculaを伴ったmassとして描出された。超音波検査では辺縁不整で内部に石灰化を伴う低echoの腫瘤として描出された。術前穿刺吸引細胞診にてアポクリン癌と診断されたため手術目的に入院した。全身検索の結果, T1aN0M0=stageIの術前診断で手術を施行した。手術は左乳房温存円状切除+level II腋窩リンパ節郭清 (Bp+Ax) を行った。病理組織学的所見でもアポクリン癌と診断され, t1an0m0=stageIであった。術後第12病日に退院し, 外来にて放射線治療を行った。現在術後18カ月経過するも再発の兆候は認めていない。