抄録
症例は58歳の男性。糖尿病治療目的で当院に入院後, 発熱と黄疸が出現し当科転科となった。腹部CT検査で肝上前区域 (S8) に腫瘍を認め, これより肝門部まで連続する胆管内腫瘍陰影と胆管の拡張を認めた。経皮経肝胆管造影では肝S8を中心とした末梢胆管の拡張と肝門部での胆管途絶を認めた。黄疸は一時正常値まで減黄されたが再度上昇し, MRCP検査で胆管内腫瘍栓の左肝管への進展を認めた。このため肝左葉からPTCDを追加挿入した。画像所見とAFP上昇から胆管内発育型肝細胞癌の診断で拡大肝右葉切除, 総胆管切除術を施行した。本疾患は一般に予後不良とされているが, 近年切除例の報告も増加している。今回の経験から本疾患の外科治療に際しては積極的な減黄管理と腫瘍進展範囲の評価が重要であると考えられた。