抄録
脾臓に原発する腫瘍性疾患は比較的稀で, 術後の病理学的検査によって確定診断の得られるものも多い。症例は29歳女性。左季肋部痛を主訴に近医受診。腹部超音波検査にて脾腫を指摘され, 入院後の腹部CTで脾は全体的にlow densityで著明に腫大するも, 結節性病変は認めなかった。血管造影でも脾は全体的にhypo vascularで, 原発性脾疾患に特異的な所見はなかった。臨床検査上も特徴的な所見はなく, びまん性脾腫瘍の診断にて脾臓摘出術を施行した。病理検査では, 核異型に乏しいspindle cellが脾全体に索状に配列, 免疫染色では血管内皮系マーカーのみ陽性であった。以上の結果から, 病理学的にはカポジ肉腫が強く疑われた。しかし, これまで脾原発性びまん型カポジ肉腫の報告例はなく, 確定診断には至らなかった。