日本外科系連合学会誌
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肝臓移植後の免疫寛容に関与する移植肝の潜在能力
坂本 俊樹松井 聡小平 祐造田中 茂夫
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2001 年 26 巻 6 号 p. 1373-1380

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抄録

肝臓は他の臓器と比較して, 移植後の免疫寛容を誘導しやすいと考えられているが, その機序の詳細は未だ研究途上にある。胎生期の肝臓は活発な造血臓器として機能しているが, 造血を終えて分化した成熟期の肝臓は, 多彩な固有機能を備えると共に, 造血系と免疫系 (hematolymphoid system) の統御に関わる臓器 (hematolymphoid organ) として生後も機能する潜在能力を保持している。この能力は肝臓の持つ旺盛な再生能力と密接に関係しており, 肝臓に特徴的な臓器背景と考えられる。肝臓移植後に, 移植された肝臓が生着しうるか否かは宿主に一方的に制御されるのではなく, 肝臓自身がこれらの潜在能力を介して, 宿主に対する免疫寛容の導入, 維持に積極的に関与している可能性がある。この発想は, 宿主と移植臓器との間に起こる二方向性の反応を強調したmicrochimerismの概念に共通する。肝臓移植後の免疫寛容の機序が, 肝臓の潜在能力をも含めた臓器特性の視点から更に解明されることが期待される。

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