抄録
(目的) 手術先行とした場合に剥離可能ではあるが剥離断端癌浸潤陽性が危惧される症例をcT4'として認識し, これに対する術前化学放射線同時併用療法 (低用量連日CDDP+5FU併用標準30Gy照射) の手術先行に対する有効性を検討した。 (対照と方法) 1998~2002年手術の胸腹部食道癌中でcT4'であった22例中18例に術前化学放射線同時併用療法を施行し, 1993~2002年の手術先行cT4'症例27例と比較検討した。 (結果) 術前化学放射線同時併用療法は臨床的に高い奏効率を示し, 病理組織学的にも剥離断端癌浸潤を高率に陰性とした。手術先行症例とのretrospectiveな比較では生存期間の有意な延長を示し, Coxの比例ハザードモデルでも術前化学放射線療法施行の有無が予後に対して高い優位性を持つ因子であることが示された。 (総括) 本療法は照射量を過剰とせず, かつ確実な局所・領域制御を図るという, バランスの取れた治療戦略であると考える。