日本外科系連合学会誌
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アルゴンビームコアギュレーターを用いた多発性肝腎嚢胞の1手術例
青木 雅一戸倉 夏木寺本 龍生小林 一雄
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2004 年 29 巻 1 号 p. 113-117

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抄録

肝嚢胞に対する手術は従来, 肝部分切除術, 嚢胞前壁切除術, 開窓術などが行われてきたが, 遺残する嚢胞内壁からの滲出液の分泌が術後の難治性腹水や再発の原因となり, しばしば問題となることがある。今回われわれは, 多発性肝腎嚢胞に対して, 従来の方法に加え, 嚢胞液の分泌能廃絶のためアルゴンビームコアギュレーター (argon beam coagulator : 以下ABC) を用いて嚢胞内壁に焼灼凝固を加え良好な結果を得ることができた。症例は44歳, 女性, 右上腹部痛と経口摂取困難を主訴に受診。腹部CT所見では, 肝全体に大小多数の嚢胞を認め, 肝外側区は胃を圧排していた。胃の圧排症状の軽減目的で, 開腹下に肝外側区域切除術, 嚢胞前壁切除術, 開窓術を施行。さらにABCを用いて嚢胞内壁に焼灼凝固を加えた。術後6カ月の腹部CT上も嚢胞液の再貯留や腹水も認めておらず, 術後1年半経過した現在も自覚症状の再発は認めていない。

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