抄録
症例は59歳, 女性。慢性B型肝炎で当院消化器内科に通院中, 平成14年8月13日の腹部CT検査で肝S3に3cm大の腫瘤を指摘, 肝細胞癌と診断した。平成14年8月15日突然左季肋部痛が出現したがすぐに消失したため予定通り8月26日入院となった。8月30日のCTAP検査で腫瘍径は7cm大に急速に増大していた。内部に広汎な低吸収域を認め, 2週間前の左季肋部痛の出現時に腫瘍内出血を来したと考えた。9月18日肝外側区域切除術を施行したところ, 腫瘍は径6.0cmで左横隔膜に直接浸潤を認め, 横隔膜と大網の一部も合併切除した。切除標本の割面像では新鮮な血腫は認めず, 瘢痕状の組織を認めた。病理所見は低分化型肝細胞癌であった。腫瘍内出血の前後での著明な腫瘍形態の変化を観察し得た肝細胞癌の1切除例を経験したので報告する。