抄録
症例は51歳, 女性。HBVキャリアー。近医にて肝左葉に腫瘤性病変を指摘され, 精査加療目的に当院消化器内科入院。精査にて左門脈本幹に至る腫瘍栓を伴う肝細胞癌と診断され, 手術目的に当科へ紹介となった。各種画像所見にて門脈腫瘍栓は門脈左枝から一部門脈本幹に達していた (Vp4) が, 門脈右枝への浸潤所見なく, 肝右葉に腫瘤性病変を認めなかったので手術適応ありと判断し, 拡大肝左葉切除術, 門脈再建術を施行した。切除標本の割面像にて左肝内門脈枝は末梢に至るまで腫瘍栓で閉塞している所見が観察された。術後経過は良好であり, 術後に肝動注リザーバ留置の上, 5FU 500mg/dayの肝動注化学療法とスミフェロン600万単位隔日投与を併用した。抑うつ症状の出現によりインターフェロン投与は中止したが, 週1回の外来通院にて5FU 500mg/weekの肝動注にUFT内服 (300mg/day) を併用し, 術後9カ月の時点で無再発生存中である。