抄録
症例は51歳, 男性。発熱と心窩部痛を主訴に近医を受診し, 肝胆道系酵素の異常を指摘されたため精査目的で当院へ紹介。腹部超音波検査およびCT検査で肝左葉外側区域 (S3) に6.2×4.2cm大の膿瘍を認め入院した。抗生剤投与にて保存的に軽快したが下部消化管検査で直腸に1型の腫瘍を認め, 生検の結果は高分化型腺癌であった。画像上膿瘍は縮小したが, 肝転移の可能性を否定できないため直腸低位前方切除術および肝部分切除術を施行した。組織学的所見では切除肝に転移は認めず, ss, n (-), P0, H0, StageIIであった。術後の経過は良好で現在まで直腸癌の再発や転移は認めていない。