2006 年 31 巻 6 号 p. 946-949
症例は45歳の男性。嘔吐・発熱を主訴に当院を受診した。腹部CT検査で左上腹部小腸に約3cmの腫瘍性病変と口側小腸の拡張を認めた。小腸腫瘍による腸閉塞の診断で, イレウス管を挿入し小腸造影検査を行った。トライツ靱帯から肛門側約50cmの部位に3cm程のapple core signを認めたため空腸腫瘍と診断した。血管造影検査では肝S6に径1cm程の転移と思われる腫瘤濃染像が認められ転移性肝腫瘍が疑われた。以上より空腸癌および同時性肝転移と診断し, 空腸部分切除術, 肝S6の部分切除術を施行した。病理学的所見として空腸腫瘍は高分化管状腺癌でly3, v2と脈管侵襲が強く, 周囲リンパ節への転移も高度であった。切除した肝病変も空腸と同様の組織型であった。今回われわれは原発性空腸癌, 同時性肝転移の1切除例を経験した。原発性空腸癌は稀な疾患であり若干の文献的考察を加え報告する。