日本臨床スポーツ医学会誌
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投球障害例の世代間における胸郭および肩甲骨上方回旋機能差の検討
阿蘇 卓也田村 将希野口 悠古屋 貫治西中 直也
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2023 年 31 巻 1 号 p. 172-179

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抄録

投球障害肩肘(以下,投球障害)例の身体特徴としては胸郭および肩甲骨上方回旋機能低下があり,臨床では世代が上がるほど機能低下が著明であることを経験する.しかし,世代間の胸郭および肩甲骨上方回旋機能差について検討した報告は少なく不明な点が多い.本研究は投球障害例の世代間における胸郭および肩甲骨上方回旋機能の差を検討することを主たる目的とした.

対象は投球障害例42 名と健常野球選手10 名(コントロール群)とした.主要測定項目は胸郭機能と肩甲骨上方回旋機能とした.胸郭機能は左右第1 胸椎椎弓根上縁を結ぶ線分の中点と左右鎖骨近位端上縁を結ぶ線分の中点との距離,肩甲骨上方回旋機能は肩甲骨関節窩上縁と下縁を結ぶ線と垂線がなす角度として単純X 線正面像から測定した.各測定項目は上肢下垂位と挙上位で測定し,変化量(上位胸郭運動量,肩甲骨上方回旋運動量)を算出した.投球障害例のうち15 歳以下(以下,U15 群)と16 歳以上(以下,O16 群)に分け,U15 群,O16 群およびコントロール群の3 群間で各項目を比較した.

O16 群およびU15 群の上位胸郭運動量はコントロール群より低下しており,また,O16 群ではU15群より低下していた.

胸郭機能低下は投球障害例の特徴であり,かつ,高校生以上の投球障害例ではより胸郭機能が低下していることで,投球時に肩肘関節への負荷をより増大させる身体機能になっていると考察された.

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© 2023 一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
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