トライアスロン競技ではスイムパートでの死亡事故が多く報告されているが,リスクを減らすための具体策は知られていない.今回私たちは,2014 年に行われたトライアスロン大会(スタンダード,スプリントディスタンス)で,救護利用し,かつリタイアした選手のリスク因子を調べる横断研究を行った.大会前に参加者の状態に関するアンケート調査を実施し,大会当日に救護所を利用,かつリタイアした者を「イベント発生群」として要因を分析した.解析はMann-Whitney のU 検定,χ 二乗検定を用いた.大会前日のアルコール摂取状況についても調査を行った.対象は718 人,うちイベント発生群は9 人,スイムでの発生は7 人であった.スイムにおけるイベント発生群ではオープンウォータースイム(OWS)の練習頻度が有意に少なく(p<0.05),OWS 経験年数が短い傾向がみられた(p=0.06).救急搬送となった1 例は,前日のアルコール摂取量が純アルコール換算60g と多いことが特徴的であった.トライアスロン大会におけるイベント発生のリスクとして,OWS の練習頻度や経験年数が少ない事が関連する可能性が示唆された.また前日のアルコール摂取は傷病発生のリスクである可能性がある.