日本臨床スポーツ医学会誌
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トライアスロン競技大会において救護利用かつリタイアした選手のリスク因子
濱井 彩乃笠次 良爾岡田 唯男石井 なおみ蔵本 理枝子
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2023 年 31 巻 1 号 p. 68-75

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抄録

トライアスロン競技ではスイムパートでの死亡事故が多く報告されているが,リスクを減らすための具体策は知られていない.今回私たちは,2014 年に行われたトライアスロン大会(スタンダード,スプリントディスタンス)で,救護利用し,かつリタイアした選手のリスク因子を調べる横断研究を行った.大会前に参加者の状態に関するアンケート調査を実施し,大会当日に救護所を利用,かつリタイアした者を「イベント発生群」として要因を分析した.解析はMann-Whitney のU 検定,χ 二乗検定を用いた.大会前日のアルコール摂取状況についても調査を行った.対象は718 人,うちイベント発生群は9 人,スイムでの発生は7 人であった.スイムにおけるイベント発生群ではオープンウォータースイム(OWS)の練習頻度が有意に少なく(p<0.05),OWS 経験年数が短い傾向がみられた(p=0.06).救急搬送となった1 例は,前日のアルコール摂取量が純アルコール換算60g と多いことが特徴的であった.トライアスロン大会におけるイベント発生のリスクとして,OWS の練習頻度や経験年数が少ない事が関連する可能性が示唆された.また前日のアルコール摂取は傷病発生のリスクである可能性がある.

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© 2023 一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
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