2023 年 31 巻 1 号 p. 86-91
(目的)腰痛にて当院を受診した成長期腰痛患者のうち,新鮮腰椎分離症患者に特徴があるかを検討することを目的とした.
(方法)対象は腰痛を主訴に当院を受診しMRI を撮像した高校生以下の1149 例であった.疼痛誘発テストとして前屈時痛,後屈時痛,Kemp test,性別,年代,スポーツ種目,疼痛自覚から受診までの期間(罹患期間)を調査した.新鮮腰椎分離症があった者(分離あり)となかった者(分離なし)の2 群に分け比較検討した.統計解析は疼痛誘発テスト,性別,年代の比較はカイ二乗検定を,罹患期間はStudent のT 検定を行なった.有意水準は5% とした.
(結果)疼痛誘発テストの陽性率はいずれも分離ありと分離なしの間に有意差を認めなかった.分離ありは分離なしと比較し男性の割合が有意に高かった(p<0.01).分離ありは分離なしと比較し中学生の割合が有意に高く,高校生の割合が有意に低かった(p<0.01).分離なしより分離ありが多かったスポーツ種目は,サッカー,野球,陸上競技,ハンドボールであった.罹患期間は分離ありと分離なしの間に有意差を認めなかった.
(結語)新鮮腰椎分離症の鑑別診断として疼痛誘発テストは有用ではなかった.分離ありは男性,中学生に多かった.腰椎分離症の可能性が高いと思われる症例には,他の疾患との鑑別のためにMRI 撮像が必要になると考えられる.