日本臨床スポーツ医学会誌
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成長期・思春期女子スポーツ選手では総テストステロン低値がスポーツ障害のリスク因子と考えられる
清永 康平南 達也松田 貴雄
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2023 年 31 巻 2 号 p. 324-333

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抄録

(緒言)これまで低エストラジオール(E2)が女性アスリートのスポーツ障害,特に疲労骨折の危険因子とされているが,今回,男性ホルモンである総テストステロン(T)低値が危険因子であるかどうかを検討した.

(方法)2019 年9 月から2021 年8 月までスポーツ障害で受診した8 歳から19 歳の女子スポーツ選手の105 名の競技,スポーツ障害の種類,初経の有無,体格・体組成の調査に加えて,血液内分泌学的検査を疲労骨折の有無などを同年代のスポーツを恒常的に行う健常な女子のT から区分して比較検討を行った.

(結果)疲労骨折は36 名で,それ以外のスポーツ障害は69 名で体格・体組成,内分泌状況に有意差はなかった.疲労骨折の発症は30 名が初経後の発症で,スポーツ障害全体も78 名が初経後の発症でE2 は初経後が有意に高かった.Tは同年代のスポーツを恒常的に行う健常な女子児童・生徒の25 パーセンタイル値である0.19ng/mL 未満が68 名(64.8%)であったが,エネルギー摂取量に有意差はなかった.

(考察)スポーツ障害で受診した成長期・思春期女子はE2 が低い初経前に多いと考えられていたが,疲労骨折も含めて初経後の発症例が多く,総テストステロン低値で症例が多かった.しかしながら体格・体組成やエネルギー摂取量に差がなかったため,T 低値はスポーツによるエネルギー消費の増加によるのではないかと推察された.

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© 2023 一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
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