日本臨床スポーツ医学会誌
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投球障害肩の理学検査における Release push test の有用性
村木 孝行高橋 晋平阿部 允哉山田 祥康永元 英明黒川 大介
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2024 年 32 巻 1 号 p. 72-77

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抄録

疼痛を誘発する理学検査は投球障害肩の投球開始および投球強度変更の基準となりうる.本研究の目的は,我々が考案したRelease push test(RPT)の投球時痛を有する症例における陽性率と,投球動作のどの位相の疼痛と関連があるかを調べ,他の理学検査と比較することである.投球時に肩関節痛を有する野球選手55 名(平均18±2 歳)を対象とした.RPT では,選手が端坐位でボールリリースの位置に手を挙げたところから検者の手を投球方向に押し,肩関節痛が生じた場合を陽性とした.それ以外にはFull can test,Empty can test,Hyper external rotation test(HERT),Neer impingement sign,Hawkins impingement sign,OʼBrien test を用いた.RPT が陽性となったのは55 例中28 例(51%)であり,全検査の中で最も陽性率が高かった.RPT のみ陽性は10 例で最も多く,HERT のみの陽性も10 例と同等であった.また,HERT 陽性の選手はコッキング期の肩関節痛が多いのに対し,RPT 陽性の選手はコッキング期以降での肩関節痛が有意に多かった(P=0.009).RPT は投球障害肩症例で陽性率が高く,他の検査では捉えられない疼痛を検出できるため,投球開始や強度変更を判断するための理学検査として有用となる可能性がある.

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© 2024 一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
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