日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
VATS 肺区域切除後の慢性期冠動脈破裂の1救命例
佐々木 昭彦宮島 正博中島 慎治
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2008 年 37 巻 1 号 p. 65-68

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抄録

症例は64歳,男性で,平成12年より間質性肺炎,肺気腫の既往があり,平成15年6月30日他院で肺癌のため VATS 左上葉と下葉の区域切除を受けた.8月14日退院し在宅酸素療法を受けていた.平成15年9月11日突然胸痛を自覚し救急外来を受診した.来院時血圧は90mmHg台で意識混濁,その後ショック状態になり心エコーでエコーフリースペースを認め,ただちに心嚢穿刺を施行した.心嚢液は血性でドレナージにより意識,血圧は回復した. CT で左胸水と心タンポナーデを認めたが大動脈に解離は認めなかった.血性心嚢液が持続するためただちに緊急手術となった.体外循環を開始し血腫を取ると心嚢内に左胸腔と通じる小さな穴とそれに接する回旋枝に出血点を認めた.心タンポナーデの原因を VATS 手術後慢性期の冠動脈破裂と診断して心停止下に回旋枝の出血点を心膜プレジェット付き7-0プロレン糸のマットレス縫合で止血した.術後は血行動態が安定し IABP を必要としなかった.その後は順調に回復し10月6日退院した.

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