従来,高齢者狭小弁輪例の大動脈弁置換術(AVR)には19mm Perimount弁(+弁輪拡大)で対応してきたが,2003年1月以降,狭小弁輪を有する高齢者19例のうち,10例にCarpentier-Edwards Perimount弁19mmを用いたAVRを,Perimount弁の挿入困難な9例に対しては19mm Mosaic弁(外径が1mm小さい)を用いて弁輪拡大術を避けたAVRを施行した.今回,19mm Mosaic弁を用いた9例の短期成績について検討した.対象患者の男女比は3:6,平均年齢は73.2±4.97(66~82)歳,平均体表面積は1.35±0.11(1.12~1.49)m
2であった.術前NYHAは8例がclass II,1例がclass IIIで,原疾患は弁狭窄が8例,感染性心内膜炎が1例であった.合併症は慢性腎不全による透析症例が4例,クローン病が1例であり,同時手術は冠動脈バイパス手術が3例,三尖弁形成術が1例であった.術後平均観察期間は12.0±7.71(2~21)カ月であり,術後心エコー検査で,大動脈弁圧較差,左室拡張末期径,左室心筋重量係数,左室駆出率,弁口面積を計測し術前と比較した.手術死亡例は認めなかったが,術当日の脳梗塞を透析症例の1例に認めた.脳梗塞症例(判定不能)を除く全例でNYHAの改善をみた.大動脈・左室最大圧較差は,術前の81.3±32.7mmHgから術後は40.3±16.3mmHgと有意に低下した(
p<0.01).大動脈・左室平均圧較差も,術前48.8±11.6mmHgから術後23.9±9.32mmHgと有意に改善した(
p<0.01).左室拡張末期径は,術前47.9±3.82mmから術後45.1±7.53mmと減少傾向であったが有意差はなかった.左室心筋重量係数は,術前の217.3±46.9g/m
2から術後160±54.9g/m
2と有意(
p<0.05)な改善を示した.左室駆出率は術前72.0±8.93%,術後67.6±6.37%と有意差なく経過した.術後の19mm Mosaic弁の平均有効弁口面積は1.25±0.11cm
2,有効弁口面積指数は0.90±0.11cm
2/m
2で,1例(11.1%)にmild patient-prosthesis mismatch(PPM),有効弁口面積指数0.77cm
2/m
2を認めたのみであった.19mm Perimount弁での軽度PPMは遠隔予後に影響しないとするわれわれの結果からみると19mm Mosaic弁の短期成績はおおむね良好と思われた.
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