日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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37 巻, 1 号
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原著
  • 香川 洋, 坂本 吉正, 奥山 浩, 石井 信一, 田口 真吾, 橋本 和弘
    2008 年 37 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    従来,高齢者狭小弁輪例の大動脈弁置換術(AVR)には19mm Perimount弁(+弁輪拡大)で対応してきたが,2003年1月以降,狭小弁輪を有する高齢者19例のうち,10例にCarpentier-Edwards Perimount弁19mmを用いたAVRを,Perimount弁の挿入困難な9例に対しては19mm Mosaic弁(外径が1mm小さい)を用いて弁輪拡大術を避けたAVRを施行した.今回,19mm Mosaic弁を用いた9例の短期成績について検討した.対象患者の男女比は3:6,平均年齢は73.2±4.97(66~82)歳,平均体表面積は1.35±0.11(1.12~1.49)m2であった.術前NYHAは8例がclass II,1例がclass IIIで,原疾患は弁狭窄が8例,感染性心内膜炎が1例であった.合併症は慢性腎不全による透析症例が4例,クローン病が1例であり,同時手術は冠動脈バイパス手術が3例,三尖弁形成術が1例であった.術後平均観察期間は12.0±7.71(2~21)カ月であり,術後心エコー検査で,大動脈弁圧較差,左室拡張末期径,左室心筋重量係数,左室駆出率,弁口面積を計測し術前と比較した.手術死亡例は認めなかったが,術当日の脳梗塞を透析症例の1例に認めた.脳梗塞症例(判定不能)を除く全例でNYHAの改善をみた.大動脈・左室最大圧較差は,術前の81.3±32.7mmHgから術後は40.3±16.3mmHgと有意に低下した(p<0.01).大動脈・左室平均圧較差も,術前48.8±11.6mmHgから術後23.9±9.32mmHgと有意に改善した(p<0.01).左室拡張末期径は,術前47.9±3.82mmから術後45.1±7.53mmと減少傾向であったが有意差はなかった.左室心筋重量係数は,術前の217.3±46.9g/m2から術後160±54.9g/m2と有意(p<0.05)な改善を示した.左室駆出率は術前72.0±8.93%,術後67.6±6.37%と有意差なく経過した.術後の19mm Mosaic弁の平均有効弁口面積は1.25±0.11cm2,有効弁口面積指数は0.90±0.11cm2/m2で,1例(11.1%)にmild patient-prosthesis mismatch(PPM),有効弁口面積指数0.77cm2/m2を認めたのみであった.19mm Perimount弁での軽度PPMは遠隔予後に影響しないとするわれわれの結果からみると19mm Mosaic弁の短期成績はおおむね良好と思われた.
  • 三宅 陽一郎, 岡部 学, 宮川 弘之, 金光 真治, 大上 賢祐, 田邉 佐和香
    2008 年 37 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者は術前より多くの合併症を有し,術後は致命的な合併症を生じやすい.この観点から低侵襲外科治療を心がけており,その治療戦略について検討した.基本方針は off-pump CABG(OPCAB)による動脈グラフトを用いた完全血行再建であるが,高度機能障害進行例においては hybrid 治療や key vessel のみの血行再建を選択している.周術期管理として,積極的な continuous hemodiafiltration(CHDF)の使用が重要であり,必要時は術中から,術後は全例で CHDF を施行し,厳密な水分コントロールを行っている.血行動態安定後,血液透析へ移行する.当科において OPCAB 導入を行った1999年8月から2006年12月までの単独冠血行再建例608例中の,慢性透析患者25例を対象とした.平均年齢66.3歳.術前合併症は全例に認め,対照である非透析群より個々の合併症についても複数保有率についても有意に高率であった.手術死亡・在院死亡ともになし.平均病変枝数2.32に対して2.4本の血行再建が行われており,全例 OPCAB により完遂していた.完全血行再建は25例中22例であった.急性期の重大な morbidity はなく,遠隔死亡は心臓関連死2例であった.対照群との比較では遜色ない結果であることが示された.慢性透析患者に対するわれわれの治療戦略は満足のいくものであった.術中より積極的に施行することで,CHDF は有用な補助手段であると考えられた.
  • 坂本 吉正, 橋本 和弘, 奥山 浩, 石井 信一, 田口 真吾, 井上 天宏, 香川 洋, 山本 和弘, 森田 紀代造, 長堀 隆一
    2008 年 37 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換術後の人工弁周囲逆流は重大な合併症の一つである.1991年から2006年に人工弁周囲逆流による溶血性貧血が主原因で再手術を施行した9例を対象とし,修復方法や手術成績について検討した.逆流部位は後尖側弁輪部3例,前尖側弁輪部2例,前交連側弁輪部1例,後交連側弁輪部1例,特定できなかったものが2例であった.原因は,弁輪部分の石灰化が5例,人工弁感染後が1例,特定できなかった症例が3例であった.手術は再弁置換術を4例,再固定術を5例に施行した.多臓器不全で1例が手術死亡し,遠隔死亡は4例で,脳梗塞1例,くも膜下出血1例,突然死1例,持続する人工弁周囲逆流による心不全死が1例であった.僧帽弁置換術後に人工弁周囲逆流を呈する症例は複数回の手術例が多く癒着剥離に難渋し十分な視野を確保することが困難なことが多く,広範な石灰化弁輪のため逆流を生じた場合には再発率も高く再固定にさまざまな工夫を要した.
症例報告
  • 佐々木 昭彦, 藤井 明, 宮島 正博
    2008 年 37 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は24歳,男性.既往歴は10年前よりSLE,ループス腎炎,ネフローゼ症候群の診断でプレドニンを長期服用していた.平成17年12月6日,突然の胸痛を訴え,造影CTでは弓部に最大径63mmの弓部大動脈瘤と前縦隔に血腫を認め,弓部大動脈瘤破裂(oozing type)と診断した.下行大動脈も5cmに拡大していた.降圧療法後,12月8日に脳分離併用上行弓部全置換術を施行した.術後11日目より縦隔ドレーン液が混濁し,13日目正中創および胸骨が離開した.その間37度台の微熱が継続し,WBC 14,200/μl,CRP14.6mg/dlに上昇したが,2回の縦隔ドレーンの細菌培養は陰性であった.1週間創開放洗浄し WBC 7,900/μl,CRP1.8mg/dlに低下し,12月29日大網充填創閉鎖を施行した.その後は順調に経過し,1月25日退院した.平成18年6月9日朝,突然左胸痛を訴え入院,下行大動脈が60mmに拡大,降圧療法により症状が落ち着いたため予定手術としたが,3日目激しい背部痛を訴えショック状態となり破裂死した.破裂を危惧して緊急手術もしくはステントグラフト治療を考慮すべきであった.
  • 柚木 知之, 南方 謙二
    2008 年 37 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎は比較的高率に脳梗塞や脳出血といった脳合併症を併発しうる.とくに感染性脳動脈瘤の破裂による脳出血の合併は予後を左右するうえで重要であり,的確な診断と治療,それと合わせて原疾患である感染性心内膜炎をどのように治療していくかは重要な問題である.今回われわれは,感染性脳動脈瘤の破裂による脳出血で発症した感染性心内膜炎症例に対し,開頭手術を先行させたうえで,開心術を二期的に行い良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する.症例は62歳,男性.脳出血で脳神経外科に入院したが,心エコーで僧帽弁および大動脈弁に付着する疣贅と弁破壊による重度の逆流を認め,活動期感染性心内膜炎と診断した.心不全兆候を認めなかったため,まず開頭血腫除去術および脳動脈瘤切除術を施行した.脳出血発症4週間後に大動脈弁,僧帽弁,三尖弁置換術を施行した.術後経過は良好で,神経学的合併症なく回復した.
  • 末澤 孝徳, 多胡 護, 森本 徹, 神野 禎次
    2008 年 37 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    緊急手術により救命しえた非穿通性心破裂症例を報告する.症例は82歳,女性.交通事故による左血胸,意識消失,くも膜下出血,右上腕骨骨折を伴い,離島より救急搬送された.緊急手術で左開胸したところ,心膜破裂を伴った右室流出路前壁の破裂を認めた.破裂創の用手的圧迫で血圧は速やかにコントロールされ,人工心肺を用いることなく,プレジェット付きマットレス縫合で修復しえた.気管切開による呼吸管理を要したが,徐々に意識レベルの改善を認め,安定した状態で近医に転院となった.
  • 山本 希誉仁, 平岩 卓根, 伊藤 久人
    2008 年 37 巻 1 号 p. 29-31
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.2型糖尿病のためインスリン治療中で,プロタミン含有インスリン(ヒューマリンN®)の使用歴があった.今回,近医で心電図異常を指摘され,当院紹介となった.冠状動脈造影で慢性完全閉塞の2枝を含む3枝病変と診断され,冠状動脈バイパス術となった.体外循環終了後,プロタミンを投与したところ,心臓の収縮は良好であるにもかかわらず,収縮期血圧が急激に35mmHgまで低下したので,ただちに体外循環を再開した.エピネフリンを投与したところ,血圧は上昇し,体外循環を離脱できた.その後はプロタミンの中和を行わずに手術を終了した.術後経過は良好で,術後18日目に独歩退院した.術後に10倍稀釈プロタミンによるプリックテストを行ったところ,陽性であった.プロタミン含有インスリンの使用歴があると,プロタミンに対して免疫学的に感作されている可能性があり,プロタミンの投与により重篤なショックに陥る危険性が高く,注意が必要と思われた.
  • 松木 克雄, 藤原 英記
    2008 年 37 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    破裂性腹部大動脈瘤に対しY型人工血管置換術を行い,術後1年で大量下血をきたして発見された中枢側吻合部仮性動脈瘤-直腸瘻の症例に緊急手術を行い救命した.術後10カ月目の CT 検査では,人工血管中枢側吻合部付近に小さな仮性動脈瘤がみられた.術後1年目に少量の下血をくり返したのち,大量下血をきたしたために,緊急で行った造影 CT 検査で中枢側吻合部破綻による仮性動脈瘤が直腸上縁(Rs)まで拡大していた.注腸造影検査では直腸穿孔がみられた.1週間後に人工血管周囲から左後腹膜腔にかけ膿瘍が拡大していたため,人工血管感染と判断し緊急手術を行った.手術は右腋窩動脈-両側大腿動脈バイパス術と Y 型人工血管の除去を行い,腹腔内デブリドマン・洗浄・ドレナージ・大網充填術・人工肛門造設術を行った.仮性動脈瘤・直腸穿孔・後腹膜腔膿瘍による人工血管感染に対し,緊急手術を行い救命したので報告した.
  • 熊谷 和也, 金 一, 上部 一彦, 大沢 暁, 小山 耕太郎, 高橋 信, 佐藤 陽子, 岡林 均
    2008 年 37 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は13歳,女児.くり返す運動後の失神を認めたため,当センターに紹介された.経胸壁心エコー検査で心機能に異常は認めなかったものの,24時間ホルター心電図で心拍の上昇に伴う ST 低下,およびトレッドミル負荷心筋シンチで同様の ST 低下を伴う心電図異常とともに左室前壁に虚血所見を認めた.冠動脈 CT 検査では左冠動脈主幹部低形成が認められたため,心筋虚血に伴う心原性失神と診断された.手術は非体外循環下で左内胸動脈-前下行枝の1枝バイパスを施行した.術後のストレスシンチでは心電図異常および心筋虚血の所見も認められず,冠動脈 CT 検査においてもグラフトの開存は良好であった.現在運動後の失神発作などは全く認められていない.学童期に失神を契機に発見された左冠動脈主幹部低形成の1手術例を報告した.冠動脈の形態異常に伴う心原性失神は非常に希であるが,放置すれば突然死などの原因となり,失神の鑑別診断として注意しておくべきである.また本症例のように,虚血が関与するくり返す失神に関しては積極的な冠動脈バイパス術が考慮されるべきであると考えられた.
  • 片山 桂次郎, 季白 雅文, 石井 修, 小林 弘典
    2008 年 37 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.3カ月前より労作時息切れを自覚し,心エコーで左房腫瘍を指摘された.腫瘍は心房中隔から発生し広基性であった.また,拡張期に左室へ逸脱し,pressure half timeは415msec と上昇しており,計測上の僧帽弁口面積は0.53cm2であった.重度の三尖弁閉鎖不全(TR)を認め,僧帽弁狭窄(MS)に伴う肺高血圧を呈していた.手術は軽度低体温完全体外循環を確立し,心停止下に右側左房切開で左房にアプローチした.中隔に付着する腫瘍を完全切除するため心内膜ごと切除した.腫瘍径は52×43mmであった.腫瘍摘出後,僧帽弁の検索を行ったが,弁尖および弁下組織の器質的変化は認めなかった.心内膜欠損部位を直接結節縫合し人工心肺を離脱したところ,中等度の僧帽弁閉鎖不全(MR)を認めたため再度心停止を行い人工弁輪による弁輪縫縮を行った.術後経過は良好で MS,MR ともに消失した.腫瘍切除後,心内膜欠損部を直接縫合したことにより僧帽弁前尖がつり上がり MR が生じたものと考えられた.腫瘍摘出後の欠損部の修復,僧帽弁の慎重な検索が重要であると考えられた.
  • 坪田 秀樹, 望月 高明, 山田 和紀, 船本 成輝, 伴 敏彦
    2008 年 37 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    先天性食道気管支瘻に合併した感染性胸部大動脈仮性瘤の1例を経験したので報告する.症例は74歳の男性.6年前より慢性腎不全に対して血液透析を行っていた.背部痛を訴えて来院し,胸部 CT により感染性胸部大動脈仮性瘤と診断された.大動脈の広範な石灰化を有する透析患者に対するグラフト置換術のリスクと感染の存在下におけるステントグラフト使用のリスクの双方を考慮した結果,ステントグラフト内挿術を施行した.術後に遷延する肺炎,飲水時の咳,嚥下困難をみとめた.上部消化管内視鏡,気管支鏡により食道気管支瘻と診断された.食道気管支瘻に対する根治術を予定していたが,術後64日目胸部大動脈仮性瘤の再出血により死亡した.病理組織検査の結果,先天性食道気管支瘻と診断した.
  • 野田 征宏, 藤井 奨, 新谷 佳子, 高木 剛, 山本 信一郎, 海崎 泰治
    2008 年 37 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.左側腹部痛を訴え近医を受診し,腹部大動脈瘤と診断され当院を受診した.腹部CT検査でマントルサインを伴った瘤形成を認め,炎症性腹部大動脈瘤を疑った.左尿管狭窄を併発していた.術前の血中 IgG4 は高値であった.尿管ステント留置を施行したのち,腹部大動脈瘤切除・人工血管置換術を施行した.手術標本の病理検査で,傍大動脈組織に多数の IgG4 陽性形質細胞の浸潤を認め,IgG4 関連の炎症性腹部大動脈瘤と診断した.術後 IgG4 値は減少したが依然高値であった.新たに右水腎症となり,尿管ステント留置が必要であった.ステロイドの内服で血中 IgG4 は減少し,CT 検査上,マントルサインは縮小した.尿管狭窄を伴うような炎症性腹部大動脈瘤では IgG4 関連硬化性疾患が関与している可能性があり,本症例では血中 IgG4 値が治療判定の良い指標となった.
  • 鎌田 創吉, 阪越 信雄, 大畑 俊裕, 笹子 佳門
    2008 年 37 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,女性.心電図異常と労作時呼吸困難で当院を受診した.経食道心臓超音波検査および心臓CT検査において大動脈弁はほぼ同大な4尖と比較的大きな1尖で構成される形態を有し,重度の大動脈弁閉鎖不全を伴っていた.また,僧帽弁閉鎖不全症,心房中隔欠損症,冠動脈-肺動脈瘻を合併していた.2005年7月28日に手術を施行した.術前診断どおりの5尖からなる大動脈弁を切除し,機械弁による大動脈弁置換術を施行した.同時に僧帽弁形成術,心房中隔欠損閉鎖術,冠動脈-肺動脈瘻閉鎖術を行った.切除した大動脈弁は病理組織学的には軽度の粘液様変化を認めるのみであった.先天性大動脈5尖弁は非常に希であり,これまでわれわれが調べえた範囲では過去に1例報告されているのみであった.
  • 中村 裕昌, 小宮 達彦, 田村 暢成, 坂口 元一, 小林 平, 古川 智邦, 松下 明仁, 砂川 玄吾, 村下 貴志
    2008 年 37 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例1は69歳,女性.両下肢浮腫,呼吸困難があり,腹部仮性大動脈瘤の左総腸骨静脈への破裂と診断し,腹部大動脈人工血管置換術およびろう孔閉鎖術を施行した.大動脈壁の免疫組織学的検索では悪性中皮腫の診断であった.症例2は47歳,女性.呼吸困難のため来院され,造影 CT で下行大動脈の嚢状瘤破裂と診断し,緊急で下行大動脈人工血管置換術を施行した.1年後の CT で下行大動脈周囲に160×70mmの巨大腫瘤を認めた.生検の結果,malignant schwannoma の診断であった.動脈瘤には,まれに非血管性腫瘍によるものがあることを念頭にいれて,術前診断をする必要がある.
  • 平山 裕子, 井元 清隆, 鈴木 伸一, 内田 敬二, 小林 健介, 伊達 康一郎, 郷田 素彦, 初音 俊樹, 沖山 信, 加藤 真
    2008 年 37 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.両下肢浮腫と呼吸困難を主訴に来院した.経胸壁心エコーで右房内に可動性に富む腫瘤を認め,心不全を伴う右房内腫瘤と診断し手術を施行した.術中の経食道心エコーで右房内腫瘤が下大静脈内へ連続していることを確認したが原発巣は不明なため,心腔内腫瘤摘除にとどめ,残存腫瘍断端はクリップでマーキングした.術直後のCTで子宮筋腫から下大静脈内へ連続する構造物の中にクリップを認め,さらに摘出標本の病理所見からintravenous leiomyomatosis(IVL)と診断した.術後半年のCTでクリップは下大静脈から子宮に連続する静脈内に移動しており,腫瘍は退縮傾向であると考えたが,今後も厳重なる経過観察が必要である.
  • 佐々木 昭彦, 宮島 正博, 中島 慎治
    2008 年 37 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2008/01/15
    公開日: 2009/09/11
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性で,平成12年より間質性肺炎,肺気腫の既往があり,平成15年6月30日他院で肺癌のため VATS 左上葉と下葉の区域切除を受けた.8月14日退院し在宅酸素療法を受けていた.平成15年9月11日突然胸痛を自覚し救急外来を受診した.来院時血圧は90mmHg台で意識混濁,その後ショック状態になり心エコーでエコーフリースペースを認め,ただちに心嚢穿刺を施行した.心嚢液は血性でドレナージにより意識,血圧は回復した. CT で左胸水と心タンポナーデを認めたが大動脈に解離は認めなかった.血性心嚢液が持続するためただちに緊急手術となった.体外循環を開始し血腫を取ると心嚢内に左胸腔と通じる小さな穴とそれに接する回旋枝に出血点を認めた.心タンポナーデの原因を VATS 手術後慢性期の冠動脈破裂と診断して心停止下に回旋枝の出血点を心膜プレジェット付き7-0プロレン糸のマットレス縫合で止血した.術後は血行動態が安定し IABP を必要としなかった.その後は順調に回復し10月6日退院した.
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